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2025-07-18

【相撲編集部が選ぶ名古屋場所6日目の一番】「元大関対決」を制した御嶽海が6連勝、ただ一人全勝でトップに立つ

元大関対決で正代を寄り切り6連勝、ついに単独トップに立った御嶽海。すべて前に出ての6連勝で、内容的にもここまで文句なしだ

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御嶽海(寄り切り)正代

こんな強い姿を見るのは、いつ以来だろうか。大関のときの、あるいは大関に上がるときの強さがよみがえってきたようだ。
 
元大関の御嶽海が強い。この日は正代との「元大関対決」を寄り切りで制して初日から6連勝。きのうまで全勝で並走していた一山本が平戸海に敗れたことにより、ついに全勝はただ一人となり、幕内の単独トップに躍り出た。
 
この日の相手は、実に35回目の対戦となる正代。今では幕内の前から4番目の取組だが、もちろんかつては大関同士としてぶつかった間柄だ。最近は花相撲などでは「お好み対決」的に割が組まれることもあり、ファンサービスとしてお客さんを沸かせるこのカードだが、やはり本場所での対決は、格段の見応え。前から4番目ではもったいないぐらいの相撲ではあった。
 
この二人の勝負は、今さら小細工を弄することもない。ぶつかり合って、どちらが差し勝ち、下にもぐって相手を起こせるかがすべて。そして今場所は、これまでの調子を映すように、立ち合いから圧力で勝った御嶽海が、左を差し、右も相手の差し手を挟むようにして殺しながら前に出て、そのまま寄り切った。

「狙いどおりの相撲か」と聞かれ、「うん、やり慣れてる相手だからね。自分の相撲が取れているのが大きい」と御嶽海は取組後も落ち着いたものだった。
 
そして今場所の御嶽海のすごいのは、すべて内容のいい6連勝であることだ。前に出て勝ったのは、この日だけではない。初日の嘉陽戦は右差し一気の攻め、2日目の英乃海戦は少し長くなったが、右からおっつけの延長のような突きで横を向かせ、3日目の琴栄峰戦はどちらが新鋭だか分からないような圧力勝ち、4日目の獅司戦は廻しを与えず突き、5日目の琴勝峰戦は右から左と入ってモロ差しで出て、振りほどかれても勢いは衰えず、といった具合で、決まり手は初日寄り切りのあと、押し出しで4連勝、この日が寄り切りと、すべて低い体勢から前に出て勝っているのだ。それでありながら、差したり、突いたり、おっつけたりを相手によって自在に使い分けているところもさすがだ。
 
令和4年秋場所にカド番で負け越し、大関から陥落してからは、精細なくズルズルと番付を下げ、先場所はついに十両まで落ちたが、一場所で戻り、「返り入幕」での今場所、誰もがビックリの快進撃だ。
 
もう、32歳になって相撲っぷりで新しいものをつかんだ、ということはないかと思うので、何か今まで思うように動けない障壁になっていたものの状態がよくなってきた、ということなのだろう。
 
もちろん、すでに32歳ではあるので、場所を通してのスタミナがどうか、ということはあるかもしれないが、一つ間違いなく言えるのは何といっても元大関、経験は十分にあるということだ(現役で大の里の次に優勝回数が多いのはこの力士なのだから……)。このまま優勝争いに残っていって、大一番を迎えたとて過度に緊張することもないし、何より体さえ動けば、相撲の勝ち方は知っているのだ。

長野県出身で、準地元の名古屋は、平成30(2018)年に初優勝したゲンのいい場所でもある。「まだまだ中盤戦が始まったばかりだから」と、本人は勝ってカブトの緒を締めるが、さあ、どこまでこの快進撃を続けてくれるか。オールドファンなら特に、肩入れしたくなるのではないだろうか。

文=藤本泰祐

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