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2025-11-22

【相撲編集部が選ぶ九州場所14日の一番】両横綱が相次ぎ敗れる! 安青錦が息を吹き返し、三つ巴で千秋楽へ

豊昇龍を力強く押し出し、再び優勝争いの先頭に並んだ安青錦。状況的には最も優勝に近い存在になったと言ってもいいが、さてあすの結果はどうなるか

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安青錦(押し出し)豊昇龍

まったく、予想もしない展開になった。
 
横綱同士の相星決戦もあるか・・・・・・、という印象だった九州場所の様相は、14日目でまた急展開した。大の里、豊昇龍の両横綱が相次いで敗れ、再び安青錦を加えた3人が並ぶ形で千秋楽を迎えることになったのだ。
 
まず予想しなかったことの一つ目は大の里の敗戦だ。大関琴櫻との対戦、立ち合いは大の里が右差し狙い、琴櫻がモロ差し狙いで一度ハジき合った。そしてその直後の琴櫻の判断がよかった。大の里が再度右を差しにきたところで、サッと左上手狙いに切り替えたのだ。先に廻しを取って上手投げ。そのあと大の里が右下手、琴櫻は下手、上手ともに取った右四つになったが、すでに立ち合いの勢いが止まってしまった大の里には、攻めにくい形となった。左からおっつけを見せるがさほど効かず、それではと左を巻き替えにいったのが悪かった。体が浮いたところを出られ、あえなく寄り切られた。
 
そして豊昇龍と安青錦の結びの一番。また予想外のことが起こった。豊昇龍の立ち合いだ。こちらは11日目に安青錦戦で義ノ富士が成功したように突いていくか、少なくとも頭を下げて当たっていくなりして起こしにいくものと思っていたが、なんと豊昇龍が見せたのは、モロ差し狙いの立ち合いだった。
 
もしかしたら相手の虚を突く立ち合いで二本入って、そこから掬って起こそうと考えたのかもしれないが……、安青錦相手に上体を起こしにいかない立ち合いをしたのでは、いかな横綱と言えども、そこから勝利へと道筋をつけることは難しいはず。とにかく「???」な横綱の立ち合いだった。
 
立った瞬間から、二人の角度の差は歴然。頭を下げた安青錦が左おっつけ、右ノド輪で押すと、豊昇龍は左に回りながらの叩き。安青錦は左で廻しに手を掛け、右で押し上げながら難なくついていって押し出した。

「しっかり自分らしく下から攻めたかった。それができてよかった。低く当たれてよかった」と安青錦。まさに会心の勝利で、これで豊昇龍には3連勝だ。
 
これで優勝争いは、いったんはかなり苦しいことになっていた安青錦が息を吹き返し、3人が横一線で千秋楽に向かうことになった。
 
あすは安青錦は琴櫻、両横綱はもちろん横綱同士の対戦だ。安青錦がもし敗れれば、千秋楽横綱同士の相星決戦で優勝が決まることになるが、さてその可能性はどれぐらいあるか。安青錦の相手の琴櫻は、苦しみに苦しみ抜いてついに勝ち越しを決めた後になるだけに、あすの一番にどこまで執念を持って臨んでこられるか。もちろん大関のプライドをかけてはくるだろうが……。まあよほど優勝を意識して硬くならない限りは安青錦有利と言えるだろう。
 
安青錦が勝った場合は、横綱同士の対決の勝者と安青錦の優勝決定戦となるが、そうなると、両横綱は強敵を2人倒さねばならないので、現状、トーナメント戦の準決勝を戦う位置にいるようなもの。そう考えると、理論的には現状、優勝の可能性を最も高く持つのは安青錦? ということになるのだが……。
 
もしそれが実現した場合には、いったんは消えかかっていた「今場所後の大関昇進」の話が再び持ち上がってくる可能性もある。12勝は勝ち星としては当初の想定より少ないかもしれないが、何しろ優勝してしまえば相対的には一番強いということなのだから、大関に推されてなんの不思議もないだろう。
 
横綱・大関が最後にひと踏ん張りして番付の威厳を示すのか、それとも新関脇が一気に優勝へと駆け上がって大関への扉を開くのか。一年納めの場所の結末はいかに。

文=藤本泰祐

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