思い出の多かった古い年が行き、新しい年がやって来ました。
あなたにとって過ぎにし年はどんな年でしたか。
なんですって? 良くもなし、悪くもなしだったって。
つまり、想定内だった、ということですね。
それは、それでまた、よろしいんじゃないでしょうか。
想定外だった、ということになればひと騒動ですから。
力士たちが取組後に漏らすひと言もそうですよ。
想定内だったら、「まあ、そうだろうな」で済みますが、
想定外だったら、虚を突かれた感じで目をシロクロしたり、
ずっこけたり、ニヤリとしたり、聞く方も大忙しです。
そんな想定外のおもしろ談話を紹介しましょう。
年の最初の、福笑いです。
※月刊『相撲』平成31年4月号から連載中の「大相撲が大好きになる 話の玉手箱」を一部編集。毎週金曜日に公開します。
男の勲章で男前にこうとしか、言い逃れができないときだってある。平成29(2017)年秋場所初日、東前頭4枚目の松鳳山は、東小結の玉鷲に引き落としで勝ったものの、取組の最中、左目の上をバッティングして大きく、それも紫色に腫らして、引き揚げてきた。言ってみれば、男の勲章だ。
さっそく支度部屋の入口近くにある大鏡に顔を映して腫れ具合を確かめた松鳳山は、
「いやあ、リッパな男前になりましたね」
と自分でも思わず苦笑いし、こう言って周囲の笑いを取り、帰路についた。
「やっている最中に当たったのがわかった。ボンって。(これがホントの)目の上のたんこぶってヤツですね。まあ、初日にしてはいい相撲が取れたので、よかった」
もっとも、やはりぶつかった場所が場所だけに、心配になったのか、帰る途中、国技館内にある相撲診療所に寄り道して治療を受けている。
それから1週間後、だいぶ腫れは引いたものの、松鳳山はこう嘆いた。
「あのあと、家に帰ったら、3歳の長男は心配して、パパ、だいじょうぶ、と言ってすぐ駆け寄ってきてくれたし、嫁も心配して、コンビニで(患部を冷やすための)氷を買ってきてくれた。でも、1歳の次男は、あれ以降、妙に冷たいんですよ。なんだか、後ろに引いている感じで、近寄らなくなったんです。抱っこもさせてくれない。失恋した感じです」
男前はつらいですね。ただし、このこわもての顔が効いたのか。この場所の松鳳山は照ノ富士(現伊勢ケ濱親方)、豪栄道(現武隈親方)の2大関を食い、8勝7敗とみごと勝ち越した。
月刊『相撲』令和4年1月号掲載