※写真上=隠岐の海を上手投げで降し、35歳の誕生日を白星で飾った白鵬
写真:月刊相撲
東日本大震災から9年。3月11日は白鵬の誕生日でもある。初場所途中休場の原因となった右かかとの裂傷による蜂窩織炎はすでに完治しているが、「体全体にどこかしらに痛みがある」と場所前に語っていた。
年齢とともに衰えは隠せないが、初日から3連勝と無難に滑り出した。35歳となって最初の相手は隠岐の海。右の相四つだけに白鵬にとってはやりやすい。過去22回対戦して白鵬の21勝だ。
軍配が返り立ち上がると、すぐに右四つに組み合った。白鵬は張り差しを見せず、右を差しにいく立ち合いだった。両者とも左上手が取れなかったが、膠着状態から隠岐の海は構わず前に出る。土俵に詰まりながらも上手を取った白鵬は、上手投げで体勢を入れ替え、そのまま隠岐の海を土俵外に出した。これで無傷の4連勝。
取り口については、「自分の万全の体勢になってからと思っていた」と簡単に振り返ったが、35歳の誕生日に関しては饒舌だった。
「こういう時期(新型コロナウイルスの感染拡大)だから喜んでもいられないんだけど、35歳になっても土俵に上がっていられることはうれしいというか、幸せだなと思います。自分が20代のころは35歳ってすごくおじさんってイメージでしたから。当時は35歳まで現役でいられるとは思わなかった」
東日本大震災から9年が経ち、「9年前は何で私はこの日に生まれたんだろうと思ったりもしたけど、相撲で何ができるかと切り替えて、悲しい思いをした人たちに頑張っている姿を見せて、勇気づけられればと思った」と語る。
野球賭博の影響でNHKの中継が中止された平成22年名古屋場所、八百長問題で揺れた平成23年5月は技量審査場所として行われ、いずれも白鵬が優勝している。
今回の無観客場所でも白鵬が優勝しそうな気がするが、若いときと違って相撲に余裕がない。誕生日ということもあり、NHKのインタビューに呼ばれた白鵬は、「いっぱいいっぱいでやっています」と話したが、これは本心だろう。
この4日間、必死に取っている印象で、どこまで息切れせずに走れるだろうか。
文=山口亜土
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