コンディショニングとは「目的を達成するために必要と考えられる、あらゆる要素をより良い状態に整えること」を意味する。選手それぞれが持つ個性をパフォーマンス発揮へとつなげるための情報を得て、しっかりと活用しよう。
※本記事はベースボール・クリニック2018年1月号掲載「野球のコンディショニング科学~知的ベースボールプレーヤーへの道~」の内容を再編集したものです。
文◎笠原政志(国際武道大学体育学部准教授)
第18回「筋力トレの基礎知識②角度特性と速度特性」
筋力トレーニングは目的に応じてそのプログラムデザインが変わります。連載第16回では各目的に沿った、具体的な方法について取り上げました。
以前に紹介したように、目的に応じたトレーニングの設定として主に負荷(重量)、量(回数)、休憩時間がありますが、それ以外にも筋力トレーニングを実施する上で知っておくべき基礎知識があります。それが「トレーニング時の角度」と「トレーニング速度」の特性です。
トレーニングの角度特性とは、結論から言えば、動かした角度(曲げた角度)での筋力は良く向上するが、動かしていない角度(曲げていない角度)での筋力はあまり向上しないということです。
図Aを見てください。これはヒジを曲げるアームカールのトレーニングをどの角度で行ったかによって、それぞれの角度での筋力増加に差が出てしまったという実験結果を示しています。
つまり、指摘角度までしっかりと動かしてトレーニングをすれば、その場所での筋力は向上するということです。
例えば、スクワットのトレーニングの際に「太ももが地面と平行になるまで曲げるように」などと指導されることがあると思います。そこまでヒザを曲げることで太ももにより大きな負荷が加えることができ、捕球姿勢のような低い姿勢での筋力の向上が期待できるのです。
ただし、野球であればポジションによってヒザがどこまで曲るのかを想定した上でトレーニングすることも、トレーニング実施するための一つの考え方になります。基本的なトレーニングフォームでのトレーニングに加えて、自身の野球動作(打つ動作、投げる動作、捕球動作、走る動作)を踏まえて上で、上半身、下半身、体幹のすべてにおいてどこまで動かすべきかを考えながらトレーニングを実施してみてください。
トレーニングの速度特性とは、結論から言えば、トレーニング速度に応じた速度の筋力が向上するということです。逆に、トレーニング速度とは異なった速度での筋力向上はあまりしないとも言えます。
図Bを見てください。低速度でトレーニングをした場合には、低速度での筋力増加率が高いのに対して、高速度での筋力増加はあまり見られません。一方、高速度でのトレーニングをした場合には、高速度での筋力が最も向上しているのに対して、低速度の筋力向上はほぼ見られません。
つまり、常にゆっくりとした低速度でのトレーニングだけをしていたら、スピーディーな動きに対応した筋力の向上は起こりにくいということになります。
この点において現場でよく起こるのが、オフ期のトレーニングによって除脂肪体重が増加したものの、春先になっていわゆる動きの「キレ」がなくなるということです。体は大きくなって最大筋力が向上したにもかかわらず、「思うように動かない」ということを春先に経験したことはありませんか?
筋肥大を目的としたトレーニングは、比較的ゆっくりとした速度で行います。しかし、最大パワー向上となれば、最大速度で行うことが必要になります。
また、筋力トレーニングでゆっくりとした動きをしていた中で、春先の暖かい日に急に全力でバットスイングをしたりランニングをしたりすると、筋肉が適応していないため肉離れにつながる危険性が高くなってしまいます。
つまり、ただ高重量を挙げるだけでなく、春先に近づいてきたらより速い速度を意識してトレーニングすることを心掛けなければ、オフ期のトレーニング効果を十分に発揮するどころか、ケガをすることにつながってしまうということです。
筋力トレーニングはボールを使用した技術練習とは異なり、地味できついことを続けなければなりません。そのため、ただトレーニングのやり方を教えてもらっただけでは、きついときに楽をしようと考えてしまいがちです。
そうならないためにも、指導者がトレーニング効果を高めるための基礎知識として各トレーニングを実施するポイントや注意点をしっかりと伝えることが大切です。選手も理解した中でトレーニングを行えば、たとえきつくてもその後の効果を期待して一生懸命実施できるものです。まさしく、目的に応じた筋力トレーニングを考えることになります。
以前に紹介した各トレーニングの目的に合わせたプログラムデザインと合わせて、筋力トレーニング効果を高めるための基礎知識として活用していただけると幸いです。
かさはらまさし/1979年千葉県出身。習志野高校―国際武道大学。高校まで野球部で活動し、3年時には主将。大学卒業後は同大学院を修了し、国際武道大学トレーニング室のアスレティックトレーナーとして勤務。その後は鹿屋体育大学大学院博士後期課程を修了し、2015年にはオーストラリア国立スポーツ科学研究所客員研究員としてオリンピック選手のサポートを歴任。専門はアスレティックトレーニング、コンディショニング科学。現在は国際武道大学にてアスレティックトレーナー教育を行いながら、アスリートの競技力向上と障害予防に関わる研究活動を行っている。学術博士(体育学)、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー、NSCA認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト、日本トレーニング指導者協会公認上級トレーニング指導士、JPSUスポーツトレーナー。
文責◎ベースボール・クリニック編集部
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