close

2020-01-03

<もっと楽しく安全に>女子野球の規定を考えるpart.2 柵越えホームランが女子野球を盛り上げる

WBSCも柵越えホームランを推進

 野球人気に直結する柵越えホームランが女子野球で出にくいことは、WBSC(世界野球ソフトボール連盟)も問題視し、改善に動いている。この動きは正確に言うと、現在は男子と同じ女子硬式野球のグラウンドサイズ(塁間、投本間)を女子の体力に合わせて小さくし、ホームランを出やすくするためにホームランラインを設けようというもの。

 一次案は12年にWBSC内部の技術委員会から女子委員会に提示されたが、塁間、投本間は「小さ過ぎる」として女子委員会が拒否し(サイズは非公開)、ホームランラインを設けることだけが了承された(前掲載表参照)。

 このホームランラインは16年に韓国で行われた第7回女子野球ワールドカップから導入され、距離、高さとも、ガイドラインの一番大きなサイズでクッションフェンスが設置された。柵越えホームランの数は、12年、14年の0本から、この大会では3本、さらに18年に行われた第8回大会では7本に伸びている。

 では、日本の女子硬式野球界にホームランラインが登場するのはいつだろう。
 塁間、投本間はWBSCが新しい国際規格を定めるまで待つとして、ホームランラインはガイドラインがあるので、すぐにでも導入できそうだが。

 残念ながら時期は未定だという。
 サイズについては「今の選手の力量を考えると、ガイドラインの中でも大きなものを採用するのが妥当」と言う指導者が多い。また、パワーや技術を考慮すると、中学生や高校生のホームランラインも別途定める必要があるのでないだろうか。実地検証をして、「がんばればホームランが出る」というサイズを割り出していただきたい。

 軟式のクラブ野球は、ぜひ眠らせていたホームランラインを復活させてほしい。「柵越えホームランを打ちたい」という現場の要望は強く、「フェンスを設置するのが大変ならカラーコーンでもいいし、最悪、ラインを引くだけでもいい」という切実な声もあるほどだ。
 18年に導入された飛ぶボールM号球によって、女子でも飛距離が伸びており、フェンスさえ置けばホームランが出る確率は高まっている。

 一方、現在外野フリーの女子中学生大会にも、別な意味でホームランラインが必要だ。大人の男性も使うM号球は女子中学生には重いようで、B号球を使っていた第1回全国大会と今年の第4回全国大会を比べると、ランニングホームランは18本から2本に激減し、二、三塁打も113本から71本に減っているからだ。
 このままではせっかく練習しても長打が出ず、選手たちは野球が楽しくなくなってしまうだろう。

「野球は打たなければ面白くない」という大阪ベストガールズの理念のように、将来の野球界を担う中学生たちには、打つ楽しさを思う存分味わってほしい。だからこそ、目標となる柵越えホームランが必要なのだ。

 フェンス、あるいはカラーコーンをホームランラインに沿って設置するのはお金と手間がかかるが、本気で女子野球を振興し、野球人気を回復したいのなら、「女子も柵越えホームラン」は実現すべき課題なのである。

飯沼素子氏が運営する女子野球情報サイト「がんばれ!女子野球」

PLOFILE
飯沼素子(いいぬま・もとこ)
大学卒業後、出版社勤務を経てフリーライターに。息子が少年野球を始めたことから野球の取材を始め、2008年から女子野球の取材も行うようになる。11年には女子野球情報サイト「がんばれ!女子野球」を立ち上げた。日本スポーツパフォーマンス学会会員。著書『改訂版 花咲くベースボール 女子硬式野球物語』がamazonにて発売中。

文責◎ベースボール・クリニック編集部

おすすめ記事

ベースボール・クリニック 2020年1月号

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事