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2026-09-25

【相撲編集部が選ぶ秋場所13日目の一番】朝乃山が熱海富士を撃破し、幕内では3年ぶりの二ケタ勝利。V争いでも1差に

立ち合いにサッと左前ミツをつかみ、攻め続けて熱海富士を寄り切った朝乃山。3年ぶりに幕内での二ケタ勝利に到達。来場所、久しぶりの上位総当たりは楽しみだ

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朝乃山(寄り切り)熱海富士

経験が、集中力が違うのか。
 
元大関が、次期大関候補を圧倒した。朝乃山が、熱海富士を右四つに組み止めて堂々正面から寄り切り。二ケタに乗せる10勝目を挙げた。
 
朝乃山と熱海富士は、右の相四つ。だが、朝乃山から見た場合、「相四つならいつもの相撲を取ればいいじゃないか」という相手かというと、おそらくそうではないだろう。
 
かつては「富山の人間山脈」の異名もあった朝乃山は、188センチ、175キロの体。体負けはめったにしない。なのでほとんどの相手には、「相手を正面に置く、胸を合わせる右四つ」になればいいわけで、基本的にはその相撲を磨いているはずだ。
 
だが熱海富士は、朝乃山にとって数少ない、右四つがっぷりに組んでは力負けする相手のはず。つまり朝乃山は、この日に限っては右四つは右四つでも、いつも磨いているのとは違う、どちらかというと小兵力士が取るような相撲を取らなければいけないわけだ。
 
もちろん、経験十分の朝乃山はそんなことは百も承知。「先に動くか、頭をつけるか」と、この熱海富士戦の作戦を頭に描いていたという。
 
そして立ち合い。ここで積み重ねてきた朝乃山の集中力が発揮される。朝乃山は理想的な踏み込みを実現させ、立ってすぐ、下からバチッと左前ミツ。しかもベストな位置でつかんだと言っていい。
 
相四つとあって自然に入った右の差し手をすぐに返す。とにかくここは差し手を返し、上手を引きつけ、攻めるところだ。
 
だが熱海富士もさすがに重い腰。俵に足をかけるところまで行く前に踏ん張って残す。攻め切れぬと見た朝乃山はいったん上手投げで崩しに出たが、体が入れ替わり、逆に一瞬俵を背負う形になった。こうなれば今度は、朝乃山は先手先手で動き続けるのみ。相手に上手を与えないよう、腰を低くしながら下からあおって攻め続けて追い詰める。俵に詰まった熱海富士は右から掬い投げを打とうとするが、朝乃山は浅い上手を放すことなく攻め続けてこれを許さず、そのまま寄り切った。

「上位の緊張感の中で取れてよかったです」と朝乃山。このところ、左ヒザのケガから徐々に復調し、平幕下位との対戦では力の差を見せていたが、勝ち込んで終盤に上位と当てられると勝てずにそれ以上星が伸びず、という場所が何度もあった。だが、ついに今場所はその壁を破り、上位を倒せるところまで回復してきたことを証明した。
 
なかなか届かなかった二ケタの10勝にもついに到達。幕内での二ケタ勝利は12勝を挙げた令和5年5月場所以来なんと3年ぶりだ。この日、きのうまで1敗だった大の里が霧島に敗れて2敗目を喫したことにより、優勝争いのほうでもトップと1差。“ひょっとしたらひょっとする”という状況にはなってきた。
 
現在東前頭6枚目。この後も星を重ねていけば小結だった令和6年5月場所以来の三役復帰という可能性も広がる。この辺りは、上位総当たりですでに勝ち越している美ノ海、勝ち越しの可能性を残す義ノ富士の今後の星次第というところもあって、まだ確実とは言えないが、一つ確実なのは、朝乃山は来場所、上位の緊張感の中で相撲を取る感触を、久しぶりに毎日味わえるということだ。

文=藤本泰祐

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