日本インカレ初日の男子10000m、西山和弥(東洋大4年)が28分43秒17で日本人2番手となる5位入賞。駅伝シーズンに向けて、鉄紺のエースが調子を上げてきた。
写真上=3年ぶりの日本インカレで西山が復調を印象付けた(撮影/田中慎一郎・陸上競技マガジン)
終始、余裕を持ったレース運びだった。男子10000mの西山和弥(東洋大4年)が、28分43秒17で日本人2番手の5位。1年時に日本人トップの3位に入って以来、3年ぶりの出場で本領を発揮した。
「28分40秒くらいを狙っていました。5000mを14分20秒あたりで通過して、後半に上げようと考えていたのですが、5000m過ぎから一人旅になってしまいました。余裕があったので、前の集団に付いて行っても良かったかなと思います」
3000m手前で縦長になったとき、西山は第2集団につける選択をした。そして5000mを過ぎてから、予定どおりにペースアップ。最終的に4位の田澤廉(駒大2年)には追い付けなかったが、きっちり上位を確保した。終盤は競り合う相手がいない苦しい展開だったが、美しいフォーム、力強い眼差しで懸命に前を追う姿は、完全復活を印象付けた。
西山は1・2年時に箱根駅伝の1区で連続区間賞。2年時には日本選手権の10000mで学生トップの4位入賞を果たすなど、活躍を続けていた。
しかし、3年時の昨年は股関節を痛め、思うような走りができなかった。「十分な練習を積めないまま、目の前の大会に何とか合わせていた」と、レースには出場していたものの、結果を残せず。ユニバーシアードの10000mでは8位に入賞したが、出雲、全日本、箱根の学生三大駅伝はすべて区間2ケタ順位にとどまった。
そこで、最終学年を迎えるにあたり、酒井俊幸監督とも相談してリハビリからやり直した。そんななか、新型コロナウイルスの感染拡大により、東洋大は3月から寮が閉鎖され、部員全員が自宅待機、個人練習に。県境を越える移動自粛要請が解除された後、段階的に帰寮となり、西山は7月中旬にチームに合流した。
個人練習中は「日々、自分自身と対話しながらやってきました」と、原点に立ち返った。自宅で家族と過ごす時間もまた、自身を見つめ直す良い機会になり、「練習に対して受け身になっていた昨年とは違う」と、表情が明るく、心身ともに前向きだ。
翌日に行われた10000m競歩では、20㎞競歩で東京五輪代表に内定しているチームメイトの池田向希(4年)が大会新記録で快勝。その池田も「4年間、一緒にやってきて苦しんでいた時期を知っているからこそ、西山らしい走りに勇気をもらった」と、刺激を受けたそうだ。
11月には全日本大学駅伝、1月には箱根駅伝が予定されている。
「最後は区間賞を取ってチームに貢献したい。もう一度、優勝争いに返り咲いて、強い東洋を取り戻したい」
箱根駅伝で10位にとどまり、2009年の初優勝から11年続けてきた3位以内が途切れた東洋大。復権に向けて、エースの西山がけん引する。
文/石井安里
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