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2020-07-16

【陸上】大迫傑 オリンピックのその先へ

7月16日、東京五輪男子マラソン代表の大迫傑(Nike)が拠点のアメリカ・オレゴン州からオンライン取材に応じ、オリンピックを1年後に控えた現在の心境、また後輩の育成に関する自身の取り組みについて語った。

上写真=コロナ禍でも平常心で自身がやるべきことに向かっているという大迫
写真/株式会社アミューズ

 今年3月の東京マラソンで自身の日本記録を更新し、東京五輪男子マラソン代表3枠目を手に入れた大迫傑は、その後拠点とするアメリカ・オレゴン州ポートランドに戻り、練習を再開。新型コロナウイルスが猛威を奮うアメリカだが、「自分のいるところは郊外ですし、これまでも自宅と練習場の往復ばかりで、練習も少人数か一人で行うことが多かった。室内やスーパーに行くときなどはマスク着用、ソーシャルディスタンスを意識していますが、それほどストレスを感じていません」と、自分のペースで日々、過ごしてきた。

 3月下旬にオリンピック延期が決まったことについては「決まった段階で、切り替えは早くできました。東京マラソンから(東京五輪まで)3、4カ月しかなかったことを考えれば、十分準備する時間ができました。延期は良かったとは言えませんが、プラスにできた」という。

 同時に「自分でいろいろなことを考える時間が増えた」ことで、ここ数カ月は競技面以外の新たな試みを行ってきた。

 ひとつは日本の高校生やその指導者を対象にしたオンラインイベント「高校陸上ウィズ・アスリーツ・プロジェクト」。男子100m前日本記録保持者の桐生祥秀(日本生命)、女子100mH日本記録保持者の寺田明日香(パソナグループ)らと展開し、夏のインターハイ中止に伴い、目標を失いがちな高校生たちに働きかけを行ってきた。

 もうひとつは日本の大学生を対象にした「Sugar Elite」の発足。詳細は近日発表されるが、大学の枠を越えて、世界で戦うために強さを求める選手を対象に、8月17日から24日までの日程でキャンプを行い、大迫の経験を伝えていくという。この取り組みは大迫自身がアメリカに渡り世界で戦ってきた経験から、「自分ひとりだけで(日本人として)世界と戦うことは難しいと感じてきました。チーム日本として戦う環境をつくりたかった」と自身に続く選手の底上げを行うことで、日本長距離界のレベルアップを図る意図がある。

「大学、実業団として機能していますけど、その先のレベルにある集団をつくってもいいのではないかと感じていました。(今の日本の体制に)疑問があるという意味ではなく、逆に一緒に協力してもっと日本を強くしていきたいと考えるようになったからです」

 大迫は一見、孤高のようにも見えるが、これまでも自身のレベルアップのみならず、「世界で戦う日本」への憧憬を口にしてきた。その思いを具現化するには引退してからではなく、現役選手であるうちに行うことが説得力と意義のある取り組みになると考え、この夏、発足を決意した。

 1年後のオリンピックについては「集大成のひとつ」として捉えているが、それがすべてではないと断言する。

「来年オリンピックが開催されることを前提に努力を続けていきますが、コロナの影響はどうすることもできませんし、現時点で明確な目標を立てる段階ではありません。何としてもやってほしいという気持ちがないわけではないですが、ものすごく強いわけではない。なければまた別の目標に向かっていくだけです」

 これまで同様、大迫はさらなる高みを目指して、突き進んでいく。

文/牧野 豊

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