7月20日(日本時間21日)、アメリカ・ネバダ州ラスベガスのMGMグランドガーデンで、WBA統一世界ウェルター級タイトルマッチが行われ、レギュラーチャンピオンのマニー・パッキャオ(フィリピン)がスーパーチャンピオンのキース・サーマン(アメリカ)を2-1の判定で破り、王座統一に成功。採点は115対112、115対112、113対114だった。そのアンダーカードでは、IBF世界スーパーミドル級チャンピオン、カレブ・プラント(アメリカ)が挑戦者マイク・リー(同)を3度倒し、3回1分29秒でTKO。初防衛に成功した。また、日本で悪名高い元WBC世界バンタム級チャンピオン、ルイス・ネリ(メキシコ)が元WBA同級王者ファン・カルロス・パヤノ(ドミニカ共和国)を9回1分43秒でKOしている。

上写真=この日、パッキャオのブローで特に機能したのは右だった

 完売14356人(主催発表)の観衆が熱狂した。「40歳になっても無敗のチャンピオンに勝てることを証明したい」と、試合発表から並々ならぬ意欲をみせていた世界6階級制覇者パッキャオは、その言葉のとおりに開始からトップギアでサーマンに迫る。サウスポースタンスからの右ロングフックで仕掛けると、それだけで会場は「マニー」「マニー」の大合唱だ。初回終盤には出てきたサーマンを左、右フックでノックダウンし、いきなりボルテージは最高潮。数々の奇跡を起こしてきた勇敢なヒーローの全盛期を思い起こさせた。

高速連打のなかの左アッパーカットも有効だった

 9年ぶりのKO勝利でルーカス・マティセ(アルゼンチン)からWBAウェルター級王座を奪ってからちょうど1年。今年1月に元世界4階級制覇者エイドリアン・ブローナー(アメリカ)に明白な判定勝ちし、今回、それ以上の難敵サーマンを迎えて、パッキャオは最高の仕上がりで臨んでいることがうかがえる。一方のサーマンも意欲満々。右ひじ負傷による22ヵ月のブランク、復帰戦での被弾などで不安定感がはりついている無敗のスーパーチャンピオンにとって、レジェンドと対戦する今回は、活況のウェルター級において存在感をあらためて示す大チャンスだ。早々にダウンを喫したものの、キレのある動きで圧力をかけるサーマンは、緊迫の攻防のなかで徐々に持ち前の巧さ、当て勘のよさを発揮する。3発、4発とコンビネーションを重ねるパッキャオの打ち終わりを狙い、6回には右ストレートで伝説の男を下がらせた。

 それから流れはサーマンに傾いた。しかし40歳の“生きる伝説”は、その流れにも見事に抗ってみせる。10回。左ボディブローで体が折れたサーマンを見てパッキャオが猛攻に出る。11回はサーマンが右ヒットでおさえ、パッキャオは最終回を抑えて終了を迎えた。

スプリットながら、堂々の勝利を得たパックマン。流れが行ったり来たりの神経戦も見事に制した

「ファンをがっかりさせることだけはしたくないんだ」と、フィリピン上院議員の職務の合間をぬってコンディションを維持し、試合1ヵ月前にロサンゼルスでフレディ・ローチ・トレーナーと合流して準備を整えてきたパッキャオは、「今日は皆さんを楽しませることができたと信じています。彼は全力を尽くし、私も全力を尽くしました」と、笑顔で語った。戦績はこれで71戦62勝(39KO)7敗2分。「次にリングに上がるのは来年になると思う」と明かしたが、9月28日に決定したIBF王者エロール・スペンス(アメリカ)とWBC王者ショーン・ポーター(同)の統一戦は「現場で観戦したい」という。

 デビュー12年目の初黒星となったサーマンは、31戦29勝(22KO)1敗1無効試合。「パッキャオは後半になって少し疲れてきたと思ったけれど、彼にはリングで積み上げてきた経験があった。今夜は神の恵みであり、学びだった」と、潔かった。

画像: 早い回から大きな「マニー」コールで後押しした超満員のファンに挨拶する

早い回から大きな「マニー」コールで後押しした超満員のファンに挨拶する

 この日のアンダーカードで日本のファンがもっとも注目していたのはおそらく、ネリ対パヤノのサウスポー元王者対決だろう。ネリは“神の左”の異名をとった元WBCバンタム級王者・山中慎介(帝拳)との2連戦で薬物違反、体重超過と、日本では悪童の代名詞。対するのは、昨年10月に横浜で“モンスター”井上尚弥(大橋)の70秒圧巻KOの餌食となったパヤノである。

パヤノの技巧に苦しんだネリだったが、爆発力の大きさは健在だった

 前日の計量でネリは、まるで“お約束”のように体重超過を犯した。1時間後の再計量までに1/2パウンド(約230グラム)を落とし、事なきを得たが、バンタム級維持が難しいのは間違いない。試合も、柔軟なボディワークから強振を繰り出すパヤノをとらえるのに時間を要した。曲者として知られるドミニカ人は、やはり巧い。この難敵を即座に見切ってしまう井上のすごさがあらためてわかるというものだ。やや手こずったネリだが、ひとたび調子づくと強かった。「パヤノはベテランらしくとても複雑なファイターで、どうやって中に入るか工夫が必要だった。5回か6回になってコントロールできるようになってきた」というネリは、7回からはっきりと攻勢を強め、9回、パヤノをコーナーに追い込み、左ボディブローをグサリ。一瞬おいて苦悶の表情でキャンバスに這ったパヤノは立ち上がれず、テンカウントを聞いた。

今年中にも実現されるノルディ・ウーバーリ(フランス)対井上拓真(大橋)のWBC同級王座統一戦の勝者に照準を定めるネリ

 ネリはこれで11連続KO勝ちで、30戦全勝(24KO)。「試合が長引くことは気にならなかった。今日は私の防御のスキルと対応力をみせられたと思う」と話した。日本での衝撃の敗戦から再起2戦目だったパヤノは、24戦21勝(9KO)3敗。

文_宮田有理子
Photo_Stewart Cook/FOX Sports

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