日本スーパーバンタム級チャンピオンの久我勇作(ワタナベ)は21日、後楽園ホールで同級3位、藤原陽介(ドリーム)とタイトルマッチ10回戦を行い、1回1分35秒、2度のダウンを奪ってTKO勝ちを収めた。今年5月、田村亮一(JBスポーツ)に勝って奪い返したタイトルの初防衛に成功した久我は、今後、海外進出の道も模索したいとしている。

2度目のダウンを奪った久我。倒れた藤原は辛くも立ち上がったが……

 長々とキャンバスに寝そべっていた藤原が、その2度目のダウンから何とか立ち上がる。しかし、足もとはさだまらない。後方へとよろけた瞬間、レフェリーの吉田正敏が体を抱きとめて、そのままストップをコールする。記録上はTKOであっても、実質上はカウンテッドアウトにひたすら近い。試合開始から、わずか95秒の早業だった。

「お見事!」と拍手喝采ばかりを送りたいところだし、実際、衰えぬ久我の強打は頼もしい限りなのだが、胸すくフィニッシュと言い切れないのは仕方ない。あったのは実力差。それも承知の藤原だから、最初から仕掛けた結果が、このラストシーンを作りだした。

 藤原は2016年、指名挑戦者として、当時の日本チャンピオン、石本康隆(帝拳)に挑んでいる。これには耳珠がある。これは決定戦に勝って王座に就いた石本に、指名挑戦者が必要だったためにとられた非常処置。上位ランカーに対戦不能者が続出し、堅調な中堅ながら、いつも安定感に不安がつきまとって見えた藤原は、11位から一気に1位にランクされて戦いに挑んだ。技巧派として成熟しきった石本に対してよく粘ったが、ダウンを奪われて判定負けしている。その後、2勝2敗。いま32歳。あるいはこれがラストチャンスかもしれない。2戦にわたる田村戦で、乱戦に引き込まれて苦労した久我を見たら、まずは先手を取って、自分のペースに巻き込むしか白星を勝ち取る手立てはない。

2度目の王座挑戦となった藤原は、出だしから攻撃を強めた

 だから、藤原は最初から好戦的だった。拳を押しつけるような左ジャブ2発。最初のジャブにはすかさず右クロスをかぶせてみせる。しかし、藤原の『図星』はここまで。すぐに応戦に出た久我にひっくり返される。

右ストレートから左フックをフォローした久我が最初のダウンを奪う

 右ストレートにスムーズにフォローされた左フック。藤原は体はポテンと転がる。そして2度目。勇敢にも右ストレートで反撃する挑戦者に、久我は豪快なオーバーハンドライトをたたき込む。なぎ倒されるという表現がまったくそのままにダウンした藤原のその後は、冒頭の描写につながることになる。

「(藤原を)追いかける展開になるかと思っていたら、立ち上がりから出てきてくれたから。距離が合って、いいパンチが当たっただけ。たまたまです」

 ひところ、ワンパンチの破壊力に回転力が加わり、風神のパンチャーと育った久我だが、今回はそういう展開に届かぬうちに仕留めた。それはそれで立派。世界をねらうなら必須の素早いステップインや、角度を違えた攻めのバリエーションも見てみたかったというのは、観戦者の贅沢というもの。勝負は早ければ早いほどいいに決まっている。

「最初にチャンピオンになったときは、初回KO勝ちのあとにこけてしまいました。もう同じことが起こらないようにしなければ」

 そう、その直後にライバルの和氣慎吾(FLARE山上)に、あまりに手痛いTKOで敗れている。

段違いのパワーを見せて会心のV1を飾った久我

「このままチャンピオンカーニバルで防衛戦をやるのもいいけれど、チャンスがあるなら海外で戦うという別の路線も考えてみたいですね」

 貪欲なのは大いにけっこう。久我はこの位置が目いっぱいというボクサーでは決してないはずだ。

文_宮崎正博
写真_馬場高志

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