27日、東京・後楽園ホールで行われたバンタム級8回戦は、日本同級3位の定常育郎(22歳=T&T)が同7位の藤本直人(28歳=新日本木村)と好ファイトを演じた末、77対75、77対75、75対77の2-1判定勝利を収めた。

上写真=定常の左ブローが藤本のボディを再三捉えた

 最終回にたった1度それらしきものがあったものの、まったくクリンチのないクリーンファイトは、実に清々しかった。距離と空間を常にキープし、持っている技術をお互いに出し合い、高め合う。わずか2ポイント差が勝者と敗者の明暗を分けたが、勝った定常も、敗れた藤本も、さらなる未来へのきっかけになるはずだ。

 序盤、先制したのは定常だ。サウスポースタイルからテンポよく、左ストレートを藤本のボディに突き刺すと、藤本のリターンブローをステップで築く距離と、見切りのいいヘッドスリップ、パーリングでかわす。全身からあふれるエネルギーは実に鮮やかで、そのスピードに藤本はついていけていなかった。

 しかし4回、定常が攻めている中で藤本のショートブローがヒット。すると定常は大量の鼻血を流し始めた。
「こんなに(鼻血が)出たのは初めて」という定常だが、これまでの彼ならヒートアップしてリズムを壊してしまったはず。しかし、「焦っていたけれど、絶対にそれを見せないように」、それまでのペースを守り続けていった。

画像: 鼻と口から出血していた定常(左)だが、焦りを封印してポイントを集めていった

鼻と口から出血していた定常(左)だが、焦りを封印してポイントを集めていった

 対する藤本は、ボディブローを若干嫌がってはいたものの、定常の右フック、左右アッパーカットを受けてもケロリ。タフなところはいつもどおりで、しかし、リターンのショートにこだわりすぎたきらいがある。「(定常に)やりづらさは感じなかったので、もっと早くから攻めていければ……」と試合後に語ったとおり、スピードボクシングを展開する定常を長く見過ぎてしまった。

 徐々に手数を増やし始めていった藤本だが、定常の軽快なフットワークは衰えず、フェイントをまじえた攻撃が藤本を上回る。ステップが軽やかだからこそ、重心を落としたブローは打てず、藤本にダメージを与えられなかった面もあったが、攻防に丁寧さを保たせるステップは、今後を見据える上では必要な武器だ。

 終盤に入り、藤本の右ショートストレート、左ショートフックもヒットしだし、最終8回、「たぶん右をもらって」定常の右目周辺が急激に腫れた。それでもひるむことなく、強烈な左ストレートをヒット。藤本も右で定常をグラリとさせたところで終了ゴングが鳴った。

痛みで目を開けられない定常。ケガの程度が心配だが、着実に進歩した姿を披露した 写真_本間 暁

 腫れと痛みで目を開けられない定常は、「冷静に戦えたのはよかったけれど、マイナスの面もある。まだまだ甘い」と自身を叱咤。「まだ10%しか出せていないので、それを試合でドンピシャで出せるように。今年中にベルトを巻きたい」と口にした。かつてはひたすら前に出るだけの選手だったが、“押し”“引き”をバランスよく使えるようになってきた。着実に、確実にレベルアップしている。11勝(4KO)4敗3分。

 毎試合、好ファイトを演じるものの、なかなか勝ちにつながらない藤本は、打撃戦にも強いが、この日は定常同様、冷静に戦うことがテーマだったのだろうか。戦績は12勝(6KO)11敗1分となったが、戦術と判断のタイミング次第では、もっと好成績を上げ、ランキングも上位にいけると思う。

文_本間 暁
写真_菊田義久

おすすめ記事

ボクシング・マガジン 2020年2月号


This article is a sponsored article by
''.