22日(日本時間23日)、ラスベガスでの注目の再戦。WBC世界ヘビー級タイトルマッチは、挑戦者のタイソン・フューリー(イギリス)が、王者デオンテイ・ワイルダー(アメリカ)を7回1分39秒TKOで破り、4年ぶりに王座に復活した。

上写真=フューリーの長い右ストレートが何度もワイルダーを追い詰めた

成長し続けるフューリーが立ち上がりからペースを握った

 大巨人はいつも想像を超えていく。戦うごとに右拳の精度を上げ、破壊力は史上最強かとまで言われるようになったワイルダーの勝利が濃厚かと思われた今回の再戦だったが、意のままに作戦を遂行した。持ち味のアウトボクシングではなく、もっと攻撃的に。大幅の増量も、そのための装備だったのだ。

 2018年12月、両者の初戦では、2年半以上のブランクから復活してわずか半年ほどのフューリーが多くの心配をよそに軽やかに動き、ワイルダーに2度ダウンを奪われながらも引き分けに持ち込んだ。この初戦の結果が、今回の戦法を決意させたのだとフューリーは言った。「ボックスアウトするのは簡単だ。でも、絶対にKOする。それが唯一、勝利を確実にする方法だからだ」。

 前回の256.5ポンド(116.3㎏)から273ポンド(123.8㎏)に増量したフューリーは、「2回でKOする」という宣言のとおり積極的に出る。丸太のような長く重いジャブで先制し、右、左フックとつないでいく。チャンピオンが引かずに打ち合いに応じることも、フューリーは計算に入れていたに違いない。

 ワイルダーはの15ヵ月の間に、長身のドミニク・ブリージール(アメリカ)を初回でワンパンチKOに屠り、技巧と強打の元WBA暫定王者ルイス・オルティス(キューバ)にも右の一撃で7回逆転KO勝ちを収め、V10に成功した。間違いなく自信を深めている。

「フューリーがKOを狙って前に出てきても、ひとたび私のパワーを味わったら入っては来れないはず」

 キャリア最重量の231ポンド(104.7㎏)にビルドアップしたワイルダーは、右を当てようと応戦した。だが、42ポンドの差は大きかった。フューリーはプレスをかけ、クリンチ際では重い体で押さえつけ、ライバルの体力をじわりと削っていった。

 そして3回、フューリーはクイックに打ち込んだワンツーを右耳後ろに突き刺してノックダウンを奪う。立ち上がってきたワイルダーに対し、フューリーの攻勢は強まる一方だった。5回には左ボディフックでダウンを追加。そのあとブレイク後の加撃で減点1を科されたが、フューリーの勢いがそがれることはない。7回、脚の踏ん張りが利かなくなっているワイルダーをコーナーに追い、フューリーが強打を畳たたみかけると、ワイルダーのコーナーからタオルが舞った。

画像: 初回から圧力をかけ続けたフューリーは2度のダウンを奪った

初回から圧力をかけ続けたフューリーは2度のダウンを奪った

第3章実現に両陣営は動き出す

 防衛10度、5年の長期政権が終わったワイルダーは、「今夜は最強の男が勝ったんだ。私は反撃をしょうと思ったところで、コーナーがタオルを投げてしまったのは残念だったが、言い訳はしない。私は勇敢な戦士だ。必ず強くなって戻ってくる」とリング上で潔く語ると、出血がみられた左耳の診察のために病院へ直行した。

 世界最重量級の頂点に返り咲いたフューリーは、「ワイルダーに敬意を表したい。彼は今夜、男らしく戦い、チャンピオンの心意気をみせた。彼はまたチャンピオンになるだろう」とライバルを称えた上で、「キングは玉座に戻ったぞ」と満員15816人の観衆に向かって叫ぶと、得意の名曲『アメリカン・パイ』を熱唱した。

 フューリーにとって、ワイルダーとのライバル関係は5年前にさかのぼる。2015年11月、絶対王者ウラジミール・クリチコ(ウクライナ)の独裁時代を終わらせ、一気にWBA、IBF、WBOのベルトを手にした時、当時WBC王座に就いたばかりのワイルダーに「統一戦を」と息巻いた。フューリーが206センチ、ワイルダーが201センチでともに無敗。巨人同士による統一戦の実現に期待が寄せられた。

 ところが、フューリーが統一世界ヘビー級王者の重圧から薬物に溺れ、防衛することなく野に下ってしまう。長いブランクから復活してから半年で、WBC王座を守り続けていたワイルダーに挑戦したものの勝ち切れず。この再挑戦で、ダウンの借りも返した上で文句なしの勝利をつかんだ。

 これをもって、フューリーは現世界ヘビー級“最強”を証明したと言っていい。1年半ほど前、最重量級の話題の中心は、WBC王者ワイルダーとほかの主要3団体のベルトを持つアンソニー・ジョシュア(イギリス)との統一戦だった。この英米頂上対決が決まらぬうちに、ブランク明けのフューリーが名乗りを上げ、ジョシュアは昨年6月のアメリカデビューで、アンディ・ルイス(アメリカ)にまさかの敗北。再戦で奪還するも、まだ信頼回復の途上にある。

 地上波FOXとESPNが手を組み、大々的なプロモーションを行った今回のペイパービューファイトで、500万ドル(約5億5500万円)のファイトマネーにゲート、番組購買の歩合をあわせると、総額は双方2500万ドルが見込まれるとESPNは報じている。

 そしてすでに、“第3戦”に関心は注がれる。敗者となったワイルダーの陣営はもちろん、イギリスのフランク・ウォーレン、アメリカ・トップランク社のボブ・アラム氏、そしてフューリー自身も、意欲を示した。ヘビー級三部作。その可能性は濃厚だ。

 元WBA・IBF・WBO3団体統一王者のフューリーはWBCとリングマガジンのベルトをコレクションに加え、戦績は31戦30勝(21KO)1分に。初黒星のワイルダーは44戦42勝(41KO)1敗1分。

文◎宮田有理子 写真◎ゲッティ イメージズ

この勝利でフューリーは真のスポーツヒーローになったのかもしれない

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