今年1月、日本のスポーツビジネス界に衝撃が走った。「アンディが、格闘技に進出する!」。アメリカンフットボールで日本一になり、スポンサーとしてサッカーワールドカップに関わり、スポーツにおけるスポンサーシップの効果を測定する日本法人の代表として確実な成果を上げてきたアンディこと秦英之が、ONE Championshipの日本の代表になると、自らのSNSで発信した。何を求めてこの選択をしたのか。秦の学生時代から親交のあるベースボール・マガジン社の樋口がその真相に迫った。【聞き手/樋口幸也(弊社執行役員) 写真/水野嘉之】

スポーツが産業として成立するためには、エコシステムが必要です。 ONEにはエコシステム=生態系がある。

――秦さんが格闘技に携わるようになるとは思っていませんでした。まず、ONEとの出会い、きっかけを教えてください。

 前職のニールセンスポーツの日本代表をしている昨年5月に、シンガポールのニールセンスポーツとONEが共同でカンファレンスを開催しました。そこにスピーカーとして呼ばれました。そのときに、CEOのチャトリ(シットヨートン)の情熱とビジョンを持って格闘技をやっているということを聞いたときの純粋なるインパクトは、今でも忘れられません。数字を活用している、アジアでも最先端をいっているスポーツ団体であるということを聞いて、衝撃を受けました。

 その後、昨年の年末に日本でONEを展開したいという話がありました。昨年の5月に触れあったのがきっかけの1つ、去年の年末に日本でやらないか話がきたのが2つめのきっかけです。

――ONEは日本のスポーツ界にある課題のソリューションを提供できるのではないかという期待をもっています。秦さんが可能性を感じていたのはどこですか。

 スポーツが産業化するにあたって、成功する要因は、エコシステムだと思うのです。しっかりした循環する仕組み、スキームでできているかどうか、客観的な視点で見たときに、ONEがもたらしているエコシステムはすごく健全であり、汎用性が高い。産業を構築する仕組みが確立されています。

――エコシステム=生態系、その生態系をわかりやすく教えてほしいのですが、何がどうなって回っているのでしょうか。

 エコシステムが回るにはいくつか必要ですが、まずは明確なビジョンです。そして差別化。ビジネスですので、ニーズ=需要があるかどうか。そこに提供できる仕組みがしっかり行われるかです。

 欧米とアジアとを比べると、今や経済的に引けをとらない。かつ人口が多い。総人口は42億人です。1つだけ大きな乖離があるのがスポーツ団体です。例えば、アメリカ大陸でしたら、NFL、NBA、メジャーリーグ、NHLというスポーツ団体があります。ヨーロッパにはプレミアリーグやUEFAチャンピオンリーグ。アジアを見たとき、実は少ない。

――SEAゲームス(東南アジア大会)で盛り上がるくらいですね。

 はい。そういった意味で、新しいスポーツビジネスの需要は十分にある。それがまず1つ。2つめには、提供する資源がある。目をつけたのがマーシャルアーツ=格闘技です。ハリウッドのスーパースターは、マーシャルアーツから成り立っていることが多い。ブルース・リーやジャッキー・チェン等の現代におけるスーパースターはマーシャルアーツとからんでいる。また、5000年の歴史であり、文化としてなりたっている武道の世界がある。日本でいえば剣道、柔道、合気道、相撲…。そこに「はまる」のではないかという考えからONEのアイデアが生まれました。

 需要と供給があるので、次に必要なのはビジネスマインドです。CEOのチャトリは、欧米で勉強をして、世界最高峰の金融事業、ウォール街で金融をしっかりビジネス化して成功を収めた。資本主義の最前線に立ったビジネス構築に慣れています。そのノウハウを今回の需要、供給に当て込んだのが、ONEチャンピオンシップというスキームです。そこにしっかりとしたファウンダー、投資家がついています。それを需要の先々にあるマーケットに入れた。

 もう1つ大きなポイントとしては、実在するスーパーヒーローを成立させました。その成立させ方も微妙に最先端をいっています。日本、韓国、中国は、サッカーのW杯に出場したり、五輪でメダルをとれたりしていました。しかし、その他の国は実は、世界と互角に戦える競技が少ない。そういうなかで、実在するスーパーヒーローを育てたのが、大きくヒットした理由です。

 ミャンマー、タイ、フィリピン、シンガポール等々で、実在するスーパーヒーローを育て上げた。地上波はもちろん、メディアプラットフォームという時代に寄せて、最新の携帯機器に映像を流し込む。Facebookと組んだり、SNSを使って自由自在に展開したりして多角化した事業として成功させた。

 何ラウンドもある長い試合ではなく、1~2分で7割の試合が終わる格闘技の試合が、携帯機器という新しいメディアプラットフォームにぴったり合ったのです。それが全部重なって今の17億円というベースが成り立っている。1つ1つのロジックが、スポーツという概念ではなく、ビジネスを成功させる組み合わせの下に明確にできている。格闘技ですけど、ほかの競技からも十分に学べる要素があります。

――日本での初めてのイベントを両国国技館、日本の武道の聖地で行うことになりました。相撲という日本文化の象徴の場所で開催する。どのような展望のもとに行ったのでしょう。

 ONEの理念は、アジアの武道が大前提です。ファウンダーのチャトリのお母様が日本人で、彼にアジアの血も流れているということもありますが、武道の精神を重んじるというONEの理念があるからです。日本においては、武道の歴史の深い国技館をあえて選んだのです。ここ数年、格闘技が欧米に引っ張られて、罵声を浴びせあったり、ただ殴り合いに終始したりする。そこを差別化しています。武道の精神であるリスペクトであったり、勇気であったり、尊重であったり、そういったものを重んじるということを含めて、対戦する場所にもつながりました。

――理念とつながるベストの会場ですね。選手たちもそういう背景のあるアリーナで戦うのですから、気持ち的にも盛り上がるでしょうね。

 そうですね。

画像: スポーツが産業として成立するためには、エコシステムが必要です。 ONEにはエコシステム=生態系がある。

This article is a sponsored article by
''.