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2020-12-22

【箱根駅伝の一番星】明治大の加藤大誠が狙う2年連続2区「前回より最低でも30〜40秒は縮めないと」

陸マガの箱根駅伝カウントダウン企画「箱根駅伝の一番星」は出場20校の注目選手を紹介。前回の箱根では1年生で2区を担った加藤大誠(2年)。「耐える区間」ではなく「勝負の区間」としての2区へ思いを馳せる。

エースとして花の2区へ

「一言で言えば、悔しい。せっかく良い位置で大保さん(海士/4年)からタスキをもらって、しかも、あんだけテレビに映ったのに。ずるずる下がっていき、物足りない走りになりました。例えるなら、ラーメン屋でラーメンを頼んだのにうどんが出てきたみたいな……。思っていたより味が薄いし、麺もぶよぶよだし、パンチ力にも欠けていた」

 明大の加藤大誠(2年)は、全日本大学駅伝での自身の走りをこのように表現した。

 昨年の夏はケガで全く走れなかったが、今季は夏合宿の練習を全部こなせていただけに、「0と100の違いがある。基礎のレベルが、去年とは違う次元にいると感じているくらい」と、自信をもって秋を迎えたはずだったからだ。

 そして、全日本では2番目に距離が長い7区に起用された。しかし、トップの東海大・西田壮志(4年)と並ぶようにしてスタートしたが、西田には離され、青学大と駒大には逆転され、4位に順位を落としてしまったのだ。

「佑樹さん(山本、駅伝監督)が求めていたものにも全然足りていなかった。最低限の役割しかできませんでした」

 前回の箱根駅伝で2区を走り、今季はエース候補の1人に挙げられていただけに、指揮官の期待に応えられなかったことを悔やんだ。また、チームは3位と健闘したが、優勝のチャンスもあっただけに、悔しさはいっそう募った。

 悔いを残した一方で、他大学のエース級と一緒に走れたことは「純粋に楽しかった」と充足感もあった。特に、加藤が意識したのが西田や青学大の神林勇太(4年)だ。鹿児島実高(鹿児島)出身の加藤が高校1年生だった頃、九州で鳴らしていたのが、九州学院高(熊本)の神林や西田だった。九州の合同合宿で顔を合わせたこともあったが、当時は全く歯が立たなかった。それだけに、彼らと同じ舞台に立っていることに感慨があった。もっとも、今回も悔しさを味わされたのだが……。

 もう一つ、加藤がすっきりできずにいるのは、自身のトラックのタイムにあった。10000m28分台は学生トップランナーの目安とされるが、今季これほど続出しているのに、加藤はなかなかマークできずにいるのだ。チーム内でも、すでに28分台ランナーは15人を数える。加藤の自己記録は、チーム17番目の29分08秒05。28分台は届きそうで届かない。

「加藤は、駅伝の単独走で力を発揮するタイプの選手なので、トラックで集団で走ると、変に力んでしまうところがあるんです。いずれはその課題を克服しないといけないと思います」(山本監督)

 28分台は来季に持ち越しになったが、箱根駅伝においてトラックのタイムは参考程度でしかない。山本監督は、加藤のロードでの走りを高く評価しており、10000mのタイムがチーム17番目でも、箱根ではもちろん出番はあるだろう。しかも、順調に当日を迎えられたならば、再び重要な区間を担うことになるはずだ。

 今回の箱根で加藤が希望するのは、前回と同じ2区。「他にも2区候補はいるので、まだどうなるか分からない」と前置きをしつつも、「前回より最低でも30〜40秒は縮めないと」と、2区を走るイメージは頭の中にできている。

 前回の箱根は急遽2区抜擢が決まり、加藤自身も驚いた。だが、チーム内には阿部弘輝(現・住友電工)や、5区に回った鈴木聖人(3年)ら、他に2区を担うべき選手がいただけに、“エース”として2区を走ったわけではなかった。前回の明治の2区は“勝負する区間”ではなく“耐える区間”だったのは否定できないだろう。もちろん、その役割を1年生にしてきっちり果たした加藤は見事だった。

「前回のように“つなぎ要員”ということのないように、他校のエースと戦いたい。もっともっと上を目指していかないと」

 今回こそ、エースとして花の2区を駆け抜けるつもりだ。


かとう・たいせい◎2001年2月25日、岐阜県生まれ。帖佐中→鹿児島実高(鹿児島)。167㎝・54㎏、A型。前回の箱根が学生三大駅伝のデビュー戦。2区区間12位でタスキをつないだ。自己ベストは、5000m13分53秒24、10000m29分08秒05(共に2020年)、ハーフ1時間03分29秒(19年)。

陸上競技マガジン 1月号

箱根駅伝2021完全ガイド(陸上競技マガジン1月号増刊)

文/和田悟志 写真/中野英聡

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