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2021-03-24

【第93回センバツ出場校の指導法】京都国際 Part2 ライフキネティックによる広い視野の集中力と動きの円滑化

ライフキネティックの「視覚機能」のトレーニングの様子。試合前や打席前に取り組む選手もいるという

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Part1に続き、京都国際高が取り入れているライフキネティックについて紹介する。これによりトレーニングできるものには、大きく「ボディーコントロール」「視覚」「認知」の3つの機能が挙げられる。とりわけ野球は、視覚から得た情報を一瞬のうちに処理、判断し、身体動作で表現することが求められる。


投打でチームの中心になる2年生の森下瑠大

野球に求められる視野の広い集中力

 野球にとって「目」の機能は非常に重要で、特に打者は分かりやすく、ストライクからボールになる球を振らされるのが打てない選手のパターンです。高校生は特に顕著で、打てない選手はいつもボール球に手を出しています。逆に言うと、そういう出し入れができる投手が勝ち上がってくるので、それに対応できなければ良い結果は望めません。

 現チームは昨年の秋季近畿大会でベスト4に入ることができましたが、バットスイングの力自体は、以前のチームと比べると平均程度です。しかし、ボール球を振らされることが減ったので、打席での粘り強さがあります。視覚のトレーニングは、週に1度のトレーニングとは別に個々で毎日行うように指導を受けており、試合前や打席に入る前にそのトレーニングを実施している選手もいます。

 また、頭でイメージしたことを体で表現する能力も全体的に上がってきているように感じますし、現チームの選手たちに最も感じるのが、試合中、冷静に物事を判断できる選手が増えていることです。「集中力」と一言で言っても、以前は気持ちが入れ込んで一点集中する視野が狭まるイメージのものだったのですが、現チームの選手たちは広くグラウンドを見渡すような視野の広い集中力を発揮しているように感じます。それが試合の随所に発揮されているので、投げる、打つ、走る、捕るといった単なる能力だけでは測れない部分の大切さを感じています。

かつて選手の目的に合わせて、「個の力を高める」ことに主眼を置いていたチーム方針も、「甲子園に行きたい」という選手の割合が増えてきたことで、変化を見せてきている。「現在の練習メニューは、個の力を上げる内容と、チーム力を上げる内容とで、半々のイメージ」で、チームとして初となる甲子園に向けてチーム力アップと選手個々の野球人生の充実を図るための個人能力のアップの両立を目指してきた。

 少し前までは「プロに行きたい」という目的を持って入ってくる選手が多かったのですが、ここ数年は「甲子園にも行きたいし、上で野球を続けることも目指したい」という選手が増えてきました。意識の高い選手も多いです。

 指導者としては、選手たち一人ひとりの思いに応えてあげることが一番の理想です。私としては、これまでは個人としての目的意識が強い選手たちだったので、それに合わせた指導をしてきましたが、「甲子園に行きたい」と言う選手が増えてきた以上、それを目指した取り組みも並行して行っていきたいと思っています。特に新3年生は選手間でも「絶対に甲子園」という意思統一ができている様子でした。


平野順大も2年生ながら主軸を打ち、投手も務める

 野球も勉強も、私はとりわけ優等生になる必要はないけれども、最低限のことは当たり前にできる選手になってほしいと思っています。かつては、課された厳しい練習に耐えることで根性がつき、それが社会に出たときに、どんな理不尽にも耐える下地になると考えられていた面がありますが、今はそのような時代ではありません。われわれのチームは練習時間も長いし、きつい練習メニューも多いですが、それでも指示されたことをやり切る根性がいくらあっても、そこに自分の意思がないと価値を生み出せないのです。

 選手たちに対して、私たちも「自分で考える」ように言いますが、なかなか一人では考えられない選手がいます。そのような選手は、考えることを途中であきらめていることが大半です。その点、ライフキネティックのトレーニングは、出された課題をできるようになることではなく、できるようにチャンレジすることが目的です。トレーナーの先生ができるようになる前に次々と新しいメニューを提示します。それに対して、一生懸命考えながら、最後までできるようになることを目指して取り組む姿勢が身についていっている気がしています。

 新3年生の取り組み方はこれまで以上だとトレーナーの先生も言われていました。それが結果と直接結び付いているかどうかは明らかではありませんが、選手たちにとって必要な時間だととらえて、継続しています。

京都国際港で実践しているライフキネティックのメニューを紹介。チーム全員で実際にやって、体感してみよう!

動きの円滑化1

[やり方]
一人1個テニスボールを持ち、片手でバスケットボールをドリブルしながら、条件に合う人と持っているボールを交換(トス)する。10人と交換。同じ人とは2回交換しない。
[条件]
• 右手でドリブル→自分の出身中学(小学)と異なる人と交換
• 左手でドリブル→自分と利き手が異なる人と交換
• 右手でドリブル→自分の誕生月と足して偶数になる人と交換
• 左手でドリブル→自分の誕生日と足して奇数になる人と交換


動きの円滑化2


[やり方]

テニスボールを一人1個持ち、手で動かしながら上の文章を読む。
母音(あいうえお)が出たらテニスボールの動きを条件の順番で変え
る。足は「右足前」→「左足そろえる」→「右足後ろ」→「左足そろえ
る」のステップを踏む。

[条件]

・ 右手下つかみ
  ↓
・ 左手下つかみ
  ↓
・ 右手上投げ
  ↓
・ 左手上投げ
  ↓
・ 体幹回し

動きの円滑化3

[やり方]
左手でバスケットボールをドリブル。ジャンケンを行い、右手でガーゼ(タオル)を条件に合わせて振る。足は足ジャンケンで負けを出す。

[条件]
ガーゼの振り方
・ グー = △
・ チョキ = ▢
・ パー = 背中側で横に振る

※Part1のウォーミングアップの答えは


Part1はこちらから

【ベースボールクリニック2021年1月号掲載】

写真◎BBM

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