close

2021-07-28

【東京五輪・陸上】隆盛の男子3000m障害。ベテラン・山口浩勢が初の大舞台で目指すもの

晴れ舞台で世界に挑む山口 写真/中野英聡(陸上競技マガジン)

全ての画像を見る

これ以上ない晴れ舞台で
結果に対して貪欲に

 山口がオリンピックを前にしても冷静になれるにはほかにも理由がある。それは豊富な国際経験だ。世界選手権への出場はないが、城西大学時代に世界ジュニア選手権(現・U20世界選手権)に出場したのを皮切りに、アジア陸上選手権、アジア大会、世界クロスカントリー選手権と幾度となく日の丸のユニフォームに袖を通し、海外選手と走ってきた。

「これまでの経験は大きいですね。海外の選手と走るイメージはできていますし、試合に向けての調整方法や心の準備の仕方も分かっています。だからこそ今、落ち着いてレースに挑めるのだと思います」

 狙うのは決勝進出。それを果たすため、山口は過去のオリンピックのデータを調べた。予選は7月30日午前9時30分と朝早い時間帯で行われるが、過去の傾向から考え、スローな展開にはならないと山口は考えている。望むところだ。ハイペースで進み、選手が絞られたなかでスパート勝負をしたいと目論む。

「集団で固まってのラスト勝負になると障害を越える際のアクシデントも起こりやすいので、そこまでに人数がふるい落されているのが理想です。2000mまではどんなに速くなってもついていける自信があります。ただラストの1000mはだいたい2分37秒から38秒で上がらないと勝負できません。自分はこれまで最も速かったラスト1000mは2分42秒台なんです。それを考えると決勝進出争いは未知の世界ではありますが、不安はありません。むしろ自分はどこまで勝負できるんだろうと、今はワクワクした気持ちですね」

 予選敗退では“五輪出場”という記録しか残らない。決勝に残り、そこで戦って“順位”という数字が欲しいと山口は話す。覚悟を決めて取り組んできた成果をこれ以上ない晴れ舞台で発揮するために。その準備は万端に整った。

文/加藤康博

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事



RELATED関連する記事