close

2021-11-02

「もうマインドコントロールですよ。カール・ゴッチと一緒にいたら、怖いものがなくなる」藤波辰爾が語る海外武者修行時代<4>【週刊プロレス】

カール・ゴッチに鍛え上げられた藤波辰巳の研ぎ澄まされた肉体

全ての画像を見る
 厳しいことで知られるカール・ゴッチ。それは単に練習メニューだけにとどまらない。日本プロレス時代に開いていたゴッチ教室では、開始時間になると道場にカギをかけ、1秒たりとも遅れると練習に参加させなかったほど。

 また技術では裏技を伝授したとも伝えられるが、手取り足取り教えるのではなく、若手相手にスパーリングで一方的に技をかけていく形。それだけにゴッチの指導法に関しての評価は人によって大きく異なる。

 そんなゴッチの下で半年もマン・ツー・マンで練習に明け暮れていたのだから、藤波辰爾の根性も大したものだ。そんな練習を通じて藤波はゴッチから何を学んだのか。
      ◇        ◇        ◇
 カール・ゴッチとの1日は、どのようなスケジュールだったのだろうか?

「朝の6時か6時半に起きて、そこから練習。だいたい9時まで。そのあと朝食。食べ終わったらカール・ゴッチは事務的な自分の仕事をするんだけど、僕は休憩。

 休憩といっても、することがなくてね。昔の分厚い本を渡されて。パンクラチオンの本とか、コロシアムで猛獣と人間が闘ってるとか。レスリングに関係する本ばっかり。もちろん英語でね。もうマインドコントロールですよ(苦笑)。カール・ゴッチと一緒にいたら、怖いものがなくなる」

 そういう時期を経て、ミッドアトランティック地区へ入った。

「ノースカロライナに入ったとき、身長は178cm、体重は80kgあるかないかで。でも、あの大男の中に入って闘っても、全然恐怖感はなかったね。毎日、カール・ゴッチとトレーニングをしてたから。マインドコントロールもされてるし(笑)」

 80kgといえばジュニアヘビー級を大きく下回る。しかしハッキリと体重別でクラス分けされているわけではない。連日、130kgを超える選手を相手にしなければならない。

「でも、カール・ゴッチから大きい選手相手にはこういう闘い方をしなさいとか教わってたからね。何より、闘う上で一番大事なのはコンディションだって。三つ大事なことがあるって。

 一つはコンディション。まずはコンディションを作りなさいって。その次は、考えなさいって。どうやって相手を崩していくか、どうやって相手を投げるか。戦略だよね。

 そしてその次に、力をつけなさい。力がないとどんなに技術を身につけてても何もできないからって。その順番だって。でも今は、それが逆になってる。力ばっかりつけて、考えることをしない。

 ましてやコンディションも十分じゃないから、レスリングがおろそかになっちゃう。そう聞くと、カール・ゴッチの考えってレスリングだけじゃなくて、いろんなスポーツにも当てはまるんじゃないかな。

 特にオリンピックなんて、カール・ゴッチがコーチしたら、金メダル取る選手がいっぱい出てくるんじゃないかな。まぁ、練習についていければの話だけどね。いやぁ、今から考えれば、あれってレスラーの練習じゃなかったね。
 体操の選手かと思ったぐらい。鉄棒とか吊り輪とか使っての練習もあったし。自分の体、ボディーウエートを使って体幹を鍛える運動ばっかり。ウエートトレーニングっていうのはあんまりない。マシンを使った運動なんて、させてくれない。カール・ゴッチの自宅の庭には鉄棒とか吊り輪があって。僕は十字懸垂やってましたからね」

 聞くだけで逃げ出したくなる。実際、長続きしなかった者も多い。たまの休みも“レスリング漬け”だった。

「たまに『今日は練習は休みだ』だって言われるんだけど、『じゃあ動物園行こう』って連れていかれて。“なんで?”って思うけど、仕方なくついていって。いろんな動物がいるけど、カール・ゴッチはほかの動物には見向きもしない。見るのはひたすらゴリラ。

 あれだけの大きな体をしてるのに、檻にぶら下がって自由自在に動き回る。『片腕で自分の体を支える力と、肩の柔らかさ。もともとわれわれもあれだけのものを持ってたはずなのに退化してしまった』とか言ってね。しかも『ゴリラは練習なんかしない。ナチュラルであれだけの力を備えている』って(笑)」

(つづく)

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事

RELATED関連する記事