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2021-12-24

【連載 名力士ライバル列伝】元大関・大受久晃が語る「押し一徹」の土俵人生――後編

「勝負どころになると自然に出てしまう」という、たたきつけるような塩まき

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「ケレン味のない」という言葉が、
これほどぴったりと当てはまる相撲ぶりもないだろう。
叩きも知らず、引くことも知らず、ひたすら前に出て相手を土俵の外へ。
新入幕技能賞に、初の三賞独占――全盛は短くとも、
純粋に「押し一筋」で花を咲かせたその生き様は、心の琴線に響く潔さがある。
元大関大受の堺谷利秋氏が回想する。
※平成28~30年発行『名力士風雲録』連載「ライバル列伝」を一部編集。毎週金曜日に公開します。

ごまかし効かない押し相撲

大関が5場所で終わったのは、一つ目標を達成して安心感が出てしまったのと、あとはヒザのケガです。初めに痛めた右をかばううちに左ヒザも痛めてしまい、これが最後まで尾を引きました。下半身をケガすると稽古量が落ちる。

特に私は稽古を積んで上に上がった人間ですから、それがなくなると目に見えて力が落ちました。それに、大関陥落後は師匠も出稽古に付いてこなくなった。やはり見られているのと、そうでないのとでは心持ちも違うんです。

あらためて、押し相撲で最も大切なことは、やはり「この相撲しかない」という信念を持つことでしょう。他人に何を言われようが、「自分にはこの相撲が合うんだ」と。それが稽古量にもつながり、本場所の土俵での闘志にもつながる。

たたきつけるような塩まきも、師匠からは注意されましたが、勝負どころになると自然に出てしまう。相手が巨漢だろうが小兵だろうが、取り口は一つ。押し相撲はごまかしが効きませんし、そうした「ナニクソ!」という闘志がなければ勝つことはできないのです。

いまの現役にも押し相撲がたくさんいますが、止まらずに最後まで押していけと声を掛けたくなる力士が多いですね。それに、立ち合いの駆け引きが多すぎる。まるで「立ち合う前から相撲を取っている」ように見えます。

清國さんの立ち合いはきれいで、待ったもほとんどしなかったでしょう。当時は、立ち合いを駆け引きに使うなんてことはありませんでしたよ。相撲はあくまで立ってから取るものです。純粋に、迷いなく、一発目をいかに強く当たるかだけを考えて立ち合ってほしいですね。(終)

対戦成績=大鵬3勝―1勝大受、北の富士13勝―3勝大受、貴ノ花15勝―8勝大受

『名力士風雲録』第21号清国 前の山 大麒麟 大受掲載

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