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2021-12-29

「ベルト返上、欠場、手術は違う。限界まで闘い続けたかった」ドキュメント潮崎豪復帰<2>【週刊プロレス】

昨年11月の中嶋勝彦戦、右肩を押さえて苦痛の表情を浮かべる潮崎豪

 昨年8月の拳王とのGHCヘビー&GHCナショナル2冠戦で右肩を負傷した潮崎豪。右肩はもはや闘えるような状態ではなかったが、GHCヘビー級王者として長期欠場&ベルト返上という選択肢を選ばなかった。それはなぜか? 潮崎は「GHCチャンピオンだからですよ」と言った。
※週刊プロレス2021年1月5&12日合併号掲載。

「どういう時に肩の痛みがあるかわからなかったですね。チョップ打った時に『これは大丈夫だ』と思っても、次の動きをした時に激痛が走ることもありましたし。毎試合、そういう状態でした。対戦相手とともに自分の右肩とも闘っていたような感じでしたね。

 でも、チョップやラリアットを打たないわけにはいかない。大丈夫だ!って思うしかなかった。試合が終わって動かなくなっても仕方ないって思ってましたよ。

 なぜか? GHCチャンピオンだからですよ。ベルトを返上して欠場して手術っていうのは違うなって。そんなことをしたら、ベルトに対しても、ファンのみんなに対しても申し訳ない。それだったら、もう行けるところまで行こうと思いました。

 言い方は悪いかもしれないけど、ケガぐらいでベルトを返上したら、今までやってきたことがパーになるんで。後悔はしたくなかった。限界まで闘い続けたかったんです。できるところまで闘い抜いて散った方が、自分の中でプロレスラーらしいなっていうイメージがあったので。

 もし試合中に右肩に何かあってもはめればいいやと思ってたし、本当に動かなくなったら、左腕もあるし、足もある。GHCチャンピオンですからそれぐらいやらないといけないと覚悟してました」

 潮崎はNOAHの創始者である三沢光晴さんや、師匠である小橋建太さんたちがどんな思いで、GHCヘビー級王座の価値を高めてきたのか、若手時代の頃から間近で見てきた。目の前にいる挑戦者はもちろんのこと、内なる自分自身との勝負もある。極限まで肉体を酷使し、魂を削り合う。どんな状態でも全力を振り絞って己の限界を超えていく。そうしてリング上で描かれた崇高なる闘いの熱が見る者を魅了するのである。

 昨年1月にGHCヘビー級王者になってから、潮崎はようやく自分が理想とするようなチャンピオン像を築き、防衛戦のたびにベルトの価値を高めると同時に、NOAHの上昇気流も加速させてきたのだ。だからこそ、右肩がどんな状態になろうとも闘い続けたかった。

 9月18日からシングルリーグ戦「N-1 VICTORY 2020」が開幕。'19年の清宮海斗、今年の丸藤正道と時のGHCヘビー級王者は不参加という選択肢もあったが、あえて潮崎はエントリー。満身創痍の中で奮闘を見せたが、3勝2敗で優勝決定戦進出はならず。

 そのN-1で優勝したのが2カ月前に潮崎を裏切って、反骨集団“金剛”入りを果たした中嶋勝彦である。両者の遺恨清算戦は11月22日の横浜武道館大会でGHCヘビー級王座を懸けておこなわれた。

 潮崎は右腕を徹底的に攻め込まれながらも、最後は豪腕ラリアット4連発で中嶋を粉砕。GHCヘビー級王座5度目の防衛に成功したが、その代償は決して小さくなかった。

「中嶋戦でムーンサルトに行った時に、いつも先にリングに手をついてから体が続く感じなんですけど、その時にも『あっ、外れたな』って感覚がありました。それでも防衛し続ける限り、手術は絶対にできないと思っていましたね」

 潮崎はGHCヘビー級王者として満身創痍でも闘い続けることを選んだ。
(つづく)
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