5日、イギリス・ウェールズ州カーディフのモーターポイント・アリーナで行われたIBF世界スーパーフェザー級タイトルマッチ12回戦は、チャンピオンの尾川堅一(34歳=帝拳)が、挑戦者3位のジョー・コルディナ(30歳=イギリス)に2回1分15秒KOで敗れ、王座を失った。
文_本間 暁(DAZN観戦)、写真_ゲッティイメージズ
衝撃的なKOシーンだった。“クラッシュ・ライト”の異名を持つ尾川の勝利する光景、パターンとイメージされていた右一撃を、尾川自身がモロに食らってキャンバスに沈んだのだから。
意識はほとんど飛んでいたはずだ。が、本能に突き動かされるように尾川は必死で立ち上がろうとする。しかしふたたび崩れ落ちると同時に、マイケル・アレクサンダー・レフェリーは10カウントを数え上げたのだった。
地元カーディフの大歓声に、雄たけびを上げて応える新チャンピオン 初回、クイックな上体の動きから素早い左ジャブを放ってくるコルディナは、尾川の入りばなにもそれを合わせてくる。対して上体の動きがやや硬く見える尾川だったが、左から右フックをガードの上から叩きつけ、コルディナの左から右へのつなぎに左フックも合わせてみせた。ラウンド中盤からは足の緊張もほぐれ、上体の動きもスムーズになったように思えた。
インターバルから2ラウンド目に向かう際、コーナーの田中繊大トレーナーが「左のガードだけ」と、コルディナの右への警戒を促してスタートした同ラウンド。尾川は得意の右ストレートをボディに突き刺して、いよいよリズムよく、ペースを手繰り寄せていく予感を抱かせたのだが……。
スッと出した左アッパーに右を合わされるタイミングを奪われて、やや思考の瞬間を作ってしまったのか。間合いを取り、リズム立て直しを図る。そのほんのわずかの“間”に、コルディナがワンフェイントを入れてから、強い踏み込みとともに渾身の右を叩き込んできた。0コンマ何秒の反応の遅れが、ボクシングでは致命傷となる。この競技の怖さとともに、そういう瞬間の集積で成り立つボクシングの崇高さをあらためて感じさせられた。
地元カーディフの熱狂的な歓声を受けながら新王者となったコルディナの戦績は15戦15勝(9KO)。初防衛戦に敗れた尾川の戦績は30戦26勝(18KO)2敗1分1無効試合となった。