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2022-06-08

【陸上】日本選手権展望・男子100m/混とんとする覇権争い。サニブラウン、小池が若干リードか?

優勝候補の中心となるのはやはり実績組(左上から時計回りでサニブラウン、小池、多田、桐生)

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オレゴン世界選手権代表選考を兼ねた第106回日本選手権(6月9日~12日/ヤンマースタジアム長居)。初日(9日)に予選、準決勝、2日目に決勝が行われる注目の男子100mは、今季は目立った記録で走っている選手はないだけに、勝負の行方は混とんとした状況だ。

サニブラウンは3年ぶり、
小池は初の王座を狙う

ここまでのところ、男子100mが盛り上がっていない。日本選手権前の2022年日本リストでは、トップのサニブラウン・アブデル・ハキーム(タンブルウィードTC)が3月19日にフロリダで走った10秒15(+0.4)。桐生祥秀(日本生命)が4月の出雲陸上に優勝したときの10秒18(+1.5)は3番手。大会を迎えるにあたり、10秒05のオレゴン世界選手権標準記録突破者はゼロであるばかりか、誰も10秒10を切れていない状況である。

9秒95の日本記録を保持する山縣亮太(セイコー)は昨年10月に手術した右ヒザの回復が不十分で、ケンブリッジ飛鳥(ナイキ)も4月に交通事故に巻き込まれた影響で欠場する。2年前の王者である桐生と前回王者の多田修平(住友電工)は今シーズンに入ってからケガをした。

だが、種目全体として今が底の状態で、今後は上がっていく、という見方もできる。

期待の一番手はサニブラウンだろう。20年シーズンはコロナ禍の影響があったのかもしれないが、1試合も出場しなかった。昨年も左大腿裏の故障で5月のフロリダ(アメリカ)、6月の日本選手権、8月の東京五輪と3試合しか走っていない。今季は3月、4月、5月と1試合ずつ出場していて、タイム的には本来のレベルまで至っていないものの、過去2シーズンと比べれば順調で、3年ぶりの王座奪還を狙う。

実績組のなかでは小池祐貴(住友電工)が唯一、故障なく試合に出続けている。アメリカでシーズンインして4月の織田記念優勝、5月のゴールデングランプリ2位(日本人1位)と日本選手で最も安定した成績を残している。記録的には10秒2台が3試合と、サニブラウン同様にまだまだだが、ゴールデングランプリで「思い切り動かす」ことに手応えを得ていた。昨年は200mで日本選手権初優勝を果たしており、100mの王座もつかみたい。

有力選手たちの試行錯誤
東洋大1年の栁田もチャンスあり?

桐生は優勝した出雲陸上でケガをしたが、そこまでの練習は順調だった。指導する東洋大の土江寛裕コーチは出雲での手応えを次のように話していた。

「動きは特に変更していませんが、動きの狙いに沿ったストレングス(身体的な強化)もやってきました。体も大きくできています。決勝は途中で緩めた感じもあり全力ではありませんでしたが、ある程度は取り組んできたことを確認できました」

昨年の東京五輪では、「改めて、出力の圧倒的な違い」を世界トップ選手たちに感じた。他の日本選手たちも体を一回り大きくするなど、その差を埋める取り組みをしている最中で、今季の状況はそれがまだ形になっていない段階、と見ることもできる。

前回優勝者の多田も体を大きくし、世界的な潮流になっている硬い靴底のスパイクを履きこなそうとした。だが、本来の持ち味とは合わないと判断し、昨年の日本選手権優勝時のスパイクに戻した。

各選手とも世界と対抗するための課題に取り組みながら、試行錯誤をしている。

過去2年、100m決勝に進出した栁田。大学生となった今回の走りに注目が集まる
過去2年、100m決勝に進出した栁田。大学生となった今回の走りに注目が集まる

若手ではゴールデングランプリ4位(日本人2位)、関東インカレ優勝の栁田大輝(東洋大1年)が面白い存在。自己ベストは10秒19だが、「標準記録の10秒05を切らないと」と、世界選手権代表入りを目標に臨む。

「去年(7位)、一昨年(7位)と決勝で良い走りができていません。予選、準決勝と着順で突破して、決勝でどう走るか。3回目なので優勝を狙いつつ、自分の走りをしないと」

大きなストライドが特徴だが、前半から前に出られるタイプ。故障明けや試行錯誤中の先輩たちから金星を挙げる、ということもないとは言い切れない。

文/寺田辰朗 写真/小山真司、毛受亮介、中野英聡

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