12日、東京・後楽園ホールで行われたOPBF東洋太平洋フェザー級タイトルマッチ12回戦は、チャンピオンの清水聡(34歳=大橋)が、挑戦者14位の殿本恭平(25歳=勝輝)を7回2分10秒レフェリーストップによるTKOで破り、5度目の防衛に成功した。
上写真=ダイヤモンドレフト炸裂! とまではいかず。いつもの当て勘ではなかった
文_本間 暁
写真_山口裕朗
終わってみれば、経験の差、底力の違い。さすがはロンドン五輪バンタム級銅メダリストである。が、ZOOMによるリモート会見に臨んだ清水の顔も腫れが目立ち、決して手放しで喜べない内容でもあった。本人も、「体のバランスが良くなかった。課題が見えた試合でした」と反省の弁を繰り返した。
挑戦者には、元日本ユース同級チャンピオンの肩書きはあるものの、キャリア、実績は大きな開きがあった。しかし、殿本は「失うものはない」と前日に語っていたとおり、思いきりよく攻撃を仕掛けていく。これが、いつもながら動きの少ない王者を捉える。見栄えは決して良くはなかった。
全身が止まったかたちのまま、多少の被弾は辞さず、相手の攻撃の間隙に強烈な左ストレート、右フックのカウンターを狙うというのが清水のやり方。初回、左右に体を揺すってリズムを構築しかけた殿本に、その2発を合わせて2度ダウンを奪った清水は見事だったが、その後はなりふり構わず連打を振るう殿本を、やや持て余すシーンも見られた。
「初回はタイミング良く当たっただけで、ダメージのないフラッシュダウンだったと思う。もっと若いときだったら、ラッシュを仕掛けたけれど」と清水。倒れた殿本も「ダメージはなかった」と語っている。
標的があまり動かない。そして、適度にヒットを奪える。清水の相手は、おそらくみな、この感覚に吸い込まれる。殿本もきっとそうだったはず。だが、そこが清水の“罠”でもある。打ち気にはやり、防御への意識が疎かになったところに、硬い左右をねじ込むのが手段。殿本のサポートに入った、ワタナベジムの井上孝志トレーナーはそれに気づいているから、ディフェンス意識を常に持たせようと「頭振れ!」の指示を飛ばし続ける。すると、思い出したように殿本は実行する。けれども、無意識に、ナチュラルに動けないところに、殿本の若さが露呈した。
強いて言えば、殿本は、左フックがもっとも威力のあるパンチなのだろう。しかし、一撃で効かせる打ち方ではなく、相打ちとなっても清水がどうしても打ち勝ってしまう。「井上浩樹もそうだったけれど、清水もカウンターのタイミングや距離に狂いがあった」と大橋秀行会長。本人も、「コロナ自粛で、対人練習が不足していた。その影響ははっきりとあった」と語っている。
7回、気迫で攻める殿本の、一瞬の隙を突いて清水が連打。さらに、左ボディアッパーから左ストレートで下がらせて、コーナーに詰めて連打。すると、福地勇治レフェリーが割って入り、試合終了を告げた。
殿本は「ダメージはなかったけれど、見た目が悪かった」と振り返ったが、ここが精一杯だったように思う。「ボディは効いてない」と試合後に語ったが、これで一気に下がらされてしまった。しかし、清水の不調を差し引いても、殿本は光るものを持っている。グローブで相手の攻撃を流したり、距離で外したりと、地味ながら渋い上手さも備えている。今後はその特性をもっと生かしてほしい。
昨年7月12日の初黒星からの再起を飾った清水は、反省点もしっかりと把握している。前回のショッキングな敗戦、眼窩底骨折、ブランクと、盛りだくさんだった不安要素を払拭したことを良しとすべきだろう。
大橋会長によると、「森選手から対戦希望があるのでぜひ実現したい」。
WBOアジアパシフィック同級王者・森武蔵(薬師寺)は、11勝6KO無敗の20歳。清水と同じサウスポーで、2度防衛しているホープだ。この新旧対決は日本ボクシング界が大いに盛り上がる好カード。ぜひ実現してほしい。
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