23日、神奈川・横浜アリーナで行われたIBF世界フライ級タイトルマッチ12回戦は、チャンピオンのモルティ・ムザラネ(37歳=南アフリカ)が、元世界3階級制覇王者で現IBF同級14位の八重樫東(36歳=大橋)を9回2分54秒TKOで下し、3度目の防衛に成功した。
上写真=互いの右が交錯するが、王者のほうが一瞬早く八重樫を打ち据える
2年7ヵ月ぶりとなった世界タイトルマッチ。最後まで、ダウンを拒否したことが八重樫の意地だった。8回、ムザラネの左ボディブローを直撃されると、リングサイドの記者席までも八重樫の呻き声が届いてきた。体をくの字に折り曲げながら、必死にボディをカバー。さらに王者の連打に、ロープを背負わされながら、辛くもラウンド終了まで持ち込んでみせた。
「右で左目を直撃されて、そっちに気を取られているところにボディをまともにもらってしまった」(八重樫)
だが続く9回、最後の死力を振り絞って八重樫は打ちかかった。けれども、ムザラネのワンツースリーをまともに浴びて棒立ちとなる。大橋秀行会長が、コーナーを上がってストップを要請しかけたが、その直後、レフェリーが八重樫を抱きかかえて続行を許さなかった。
「完全に力負けです。いま、やれることはすべてやったと思う。それでもかなわなかったんだから……」。塞がった左目が痛々しいが、敗者はしっかりと上を向いて、毅然とした態度で応えた。
スタートは順調な滑り出しに見えた。距離をとり、軽快にフットワークを使って右へ左へとサークリングし、追いかけてくるムザラネのバランスを崩させていた。しかし、八重樫もコンパクトに絞ったワンツースリーを放っていくと、王者は長いリーチを折りたたんだガードで遮断する。八重樫もそれは織り込み済みで、おそらくヒットを奪う気はなく、ガード上を叩くことを目的としたものだったはず。ペース、リズムを渡さない。そういう展開を続けていって、ムザラネの打ち気をそらして体力の消耗を誘い、中盤から後半勝負──と戦略を立てていたのだろう。
4回から、八重樫は猛然と果敢にムザラネに打ちかかっていった
が、そんな展開は3回まで。ムザラネの“圧”を感じ、ポンポンと出してくる連打にリズムを奪われ始めていると察知したのだろう。4回、八重樫は前に出た。左ボディブローから右を叩きつけ、右ボディフックから左アッパーカット。かつての韓国ファイタースタイルで、ムザラネを潰しにかかる。
しかし、被弾を最低限に抑えるムザラネに対し、コツコツともらってしまう八重樫。その差が徐々に明白に表れていく。ガード、サイドステップ、ダッキング……。防御技術をなんとか駆使してかわそうとした八重樫だが、どれもワンテンポ、タイミングが遅れてしまう。リターンブローを狙うが、打たれてかわされ……を繰り返してしまう。
「最後の回も含めて、3度、試合を止めようとした。最初はかなり早い回で。でも、それは松本(好二)トレーナーに止められた」と大橋会長。これまでのキャリアで積み重なった激戦におけるダメージを考慮した、師としての決断。でも、八重樫は連打を食うと猛然と打ち返し、師の想いをも跳ね返していった。
八重樫東が、人々の心をギュッと鷲摑みにしてきたファイトスタイル。決して諦めない姿。それはこの日もしっかりと見せてもらった。敗れたことは残念だが、八重樫が全力を注いだパフォーマンスは、会場に駆けつけたファン、テレビ観戦した者たちの心に、いつもどおりグサリと突き刺さったはずだ。
「今後のことは、いまはなにも考えられない。ゆっくりと考えたい」と八重樫。
高校1年、15歳から始めて20年超。心血を注ぎ続けたこの競技を想う気持ちは、われわれには計り知れない。
「ボクシングを全うしたい」──。八重樫は近年、常々語ってきた。
これだけは伝えたい。リングで戦い続けることだけが“全う”ではない、と。
同じく“ボクシングを全うしようとしている”記者は思う。
文_本間 暁
写真_菊田義久
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