close

2022-12-23

【陸上】ヒューストンでマラソン日本記録更新を目指す新谷仁美、3分05秒のリズムとマラソンのペースの模索

11月末のクイーンズ駅伝3区で区間賞を獲得した新谷仁美(積水化学)

来年1月15日のヒューストン・マラソン(アメリカ)で日本記録更新を目指す新谷仁美(積水化学)。クイーンズ駅伝の3区で区間賞を獲得後、マラソン練習にシフトしている。東京マラソンでの敗因は「マラソンのトレーニングをやり過ぎた」ことだという新谷と横田真人コーチ(TWOLAPS TC)がポイントに挙げるのはリズムとペースだ。

懺悔しながら走っていたが、落ち込むほどではないと

10000m日本記録保持者の新谷仁美(積水化学)が、クイーンズ駅伝レース後にマラソンの日本記録に意欲を見せた。1月のヒューストン・マラソンでは「それ(日本記録)が絶対条件ですね」と、野口みずきが2005年のベルリン・マラソンで出した2時間19分12秒の更新を目指す。

野口の日本記録は1km平均3分17秒94で走り切った計算になる。新谷が22年3月の東京マラソンで2時間21分17秒(日本歴代6位)をマークしたとき、1km平均は3分20秒90だった。

そのペースにハマったことが失敗だったと新谷は考えている。

「3分20秒という、自分が本来大事にしているリズムから離れることで、余計な動きが増えるんです。そうなると疲労も変にたまってきます」

これはレースだけに限らない。練習でも新谷本来のリズムに合わないペースを繰り返すことで、故障が増えた可能性がある。

「ここが痛い、こっちが痛い、という症状が出てきてしまって、練習が継続できませんでした。私は10000mを長くやっていたので、1周74秒(10000m30分50秒)、1km3分05秒ペースが体内時計じゃないですけど、感覚的には一番押しやすいペースなんです。東日本女子駅伝も3分05秒だったので楽だな、という感覚を持つことができました。それを42.195km続けられるわけではありませんが、良い動きで走ることで疲労も溜まりにくくなる。だったら、日本選手があまりやらないメニューになりますが、3分05秒のリズムを大事にして、長い距離のメニューだったら、実際には3分10~15秒くらいのペースでやる。そういう形にした方が私には合っています」

クイーンズ駅伝3区では、最後は先頭争いをして区間賞を獲得したが、2km付近から一度、廣中璃梨佳(JP日本郵政グループ)たちに引き離された。自身の持つ区間記録にも48秒及ばなかった。

「遅れてからは懺悔しながら走っていました。ゴメンなさい、ゴメンなさいと。今日の走りではマラソンにはつながりませんね。42kmですよ。今日みたいに懺悔しながら走っていたら話になりません。ただ、私の場合は気持ちの不安定さがあるというところで、区間賞を取った意味はあります。すごく落ち込むほどではないのかな、と切り換えてマラソン練習に入って行ける」

そんな新谷の背中を、指導するTWOLAPS TC・横田真人コーチも後押しする。前回の東京マラソンでは“マラソンのトレーニング”をやり過ぎたことが失敗だったと分析。ヒューストンに向けては“新谷のトレーニングの中でどうマラソンを組むか”というテーマで練習している。

「もう背水の陣です」と横田コーチ。「東京前は僕のメニューを新谷がやってくれて、あの結果でした。次にメニューを変えてまたダメだったら、僕はクビになる」。

そのくらいの覚悟で新谷&横田の同学年コンビは、日本記録更新に挑戦する。

文/寺田辰朗 写真/中野英聡

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事



RELATED関連する記事