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2023-04-28

【連載 大相撲が大好きになる 話の玉手箱】第8回「食に賭ける執念」その4

平成30年秋場所7日目、北勝富士は佐田の海を寄り切って無傷の7連勝

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一年を通じてなにがあっても、いや、なにかがあったときこそ、めげずにもりもり食うヤツは最後に笑います。
究極の成功の秘訣、勝利の原動力は食うことであります。これに尽きます。とりわけ、体力勝負の力士はそうです。
だから、食うことに人一倍こだわり、神経を使い、その労力たるや、たいへんなものです。
そんな力士たちの食うことに賭けた執念のエピソードを紹介しましょう。
※月刊『相撲』平成31年4月号から連載中の「大相撲が大好きになる 話の玉手箱」を一部編集。毎週金曜日に公開します。

焼き肉を封印も……

食ってこそ、勝負に勝てる。これは力士たちの常識だ。ところが、中には、この常識の裏を行き、みごとに勝ち越した力士がいる。
 
平成30(2018)年名古屋場所、幕尻の東16枚目まで落ちた北勝富士は猛発奮し、11勝4敗の好成績をあげた。しかし、力士たちが目指すのはあくまでもパーフェクトの全勝だ。場所後、北勝富士も4敗した敗因を振り返り、分析して、とんでもないことを発見した。なんと負けた前夜、いずれも焼き肉を食べていたのだ。

「そうか、オレは焼き肉を食っちゃいけない人間だったんだ」
 
こう思った北勝富士は、次の秋場所、涙を飲んで大好きな焼き肉を封印し、ホントにひと口も食べずに場所に臨んだ。すると、どうだ。初日から7連勝し、白鵬、鶴竜、髙安らと並んで優勝戦線のトップに立ったのだ。
 
この7連勝目も、東前頭11枚目の佐田の海をノド輪で押し込み、最後は寄り切る文字通りの快勝。意気揚々と引き揚げてきた北勝富士は、取り囲んだ報道陣に好調の秘密を聞かれると、澄まし顔でこう答えた。

「日頃の行いがいいからですよ」
 
しかし、翌日から3連敗するなど、手のひらを返したように負けが混み、終わってみれば9勝(6敗)止まり。ひょっとして気が緩み、ついつい焼き肉に手が出たのかもしれませんね。

月刊『相撲』令和元年11月号掲載

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