close

2023-05-23

【陸上】日本勢5名が12秒台突入のセイコーGGP女子100mH、スプリントに自信の寺田明日香、スパイクを試した福部真子、日本選手権へそれぞれの現在地

女子100mH優勝の寺田(右)と2位の田中(左)

5月21日に横浜・日産スタジアムで行われたセイコーゴールデングランプリ陸上2023横浜。ワールドアスレティックス主催のコンチネンタルツアーゴールドに位置づけられ、ブダペスト世界選手権に向けてワールドランキングのポイントを得る上でも重要な大会だ。決勝のみの一発勝負で行われた女子100mHは、寺田明日香(ジャパンクリエイト)が12秒86(+0.4)の自己タイで優勝を飾った。田中佑美(富士通)が自己新の12秒89で2位、日本記録保持者の福部真子(日本建設工業)が12秒91で3位、青木益未(七十七銀行)が12秒94で5位に入ったほか、清山ちさと(いちご)が自身初の12秒台となる12秒96で6位に。日本選手のうち5名が12秒台という歴史的な超高速レースとなった。

日本記録保持者のセイコーGGPでの狙い

昨年9月にブダペスト世界選手権の参加標準記録(12秒78)をただ一人突破済みの福部は、日本選手権で3位以内に入れば、世界選手権の代表に即内定する。このセイコーGGPでは、2日で3本のレースを走る日本選手権を見据えて、脚への負担を軽減するために、カーボンプレートが入っていない中長距離用のスパイクを試すという狙いがあった。

「日本選手権は3本あるので、決勝で3番以内に入るとなると、脚のことを考えたら中長距離のスパイクを履かないともう無理です。これで(12秒)91が出るんだったら、決勝でSP2(アディダス社の短距離用スパイク)を履いて勝負を仕掛けて、(12秒)6台だったり、7台は見えてくるのかなと思います」と福部は言う。

4月29日の織田記念で12秒97(+0.6)、5月7日の木南記念で12秒91(+0.7)、さらにこのセイコーGGPで12秒89と、今季初めて12秒台をマークしてから大きく飛躍を遂げている田中。日本選手4人目の12秒8台突入の快挙にも、「木南から0秒02なので」と壁を感じずにクリアしてみせた。12秒台連発の理由を「後半、抜き足が遅れなくなったこと。そこの技術改善が一番だと思います」と見ている。

寺田は、2週間前の木南記念から2戦連続で12秒86と、今季の女子100mH界をリードする存在だ。セイコーGGPの12秒86は、「日本選手権シフトでかなりハードな練習ができているなかで、疲労も抜けないまま走ってのベストタイだったから、いいかな」と合格点。この冬期は「耐乳酸」をテーマに取り組んできたといい、「今年は10台目で並んでいたら絶対負けないと思っている」とスプリント力に絶対的な自信を持っている。

昨年優勝者として日本選手権に臨む福部は、「(世界選手権の参加標準)12秒78をもう一回切っておかないと良くないと思っている」と12秒78切りを日本選手権の目標に置く。陸上ファンにとっては楽しみなレースだが、「やる側としてはもう眠れない毎日ですよ(笑)。でもうれしいです。自分が(12秒)7台に入って、たぶん7台への抵抗みたいなのはなくなったのかな」と女子100mHの活況を、自らをさらなる高みに引き上げるための原動力にしている。

初の世界選手権出場を目指してヨーロッパ、オーストラリア遠征も経験した田中は、「ポイントさえ稼げれば日本選手権でちょっとへこっても、ランキングで入れるんじゃないかっていう打算があったんですけど、そうも言ってられなくなった。ハードル界としては良いことなので、しっかり確保できるように頑張りたい」と気を引き締める。

7月以降の2024年パリ五輪参加標準記録切り(12秒77)をターゲットにしているという寺田は、日本選手権では「勝負は勝負なので、そこを大事にしていきたい」と戦うスタンスは崩さない。

6月2日に予選と準決勝、6月3日に決勝が行われる日本選手権の女子100mH。この3人に12秒台の青木、清山が加わり、12秒7台の決勝も見られるかもしれない。



左からセイコーGGPの女子100mH優勝の寺田、3位の福部、2位の田中

写真/中野英聡、黒崎雅久 文/内田麻衣子

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事



RELATED関連する記事