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2023-05-22

【相撲編集部が選ぶ夏場所9日目の一番】明生が理想的な攻めで横綱に土をつけ、全勝から引きずり下ろす。さあ大混戦だ!

照ノ富士を寄り切って、初めての金星を挙げると同時に優勝争いでもトップに並んだ明生。これが大混戦の始まりとなるか?

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明生(寄り切り)照ノ富士

全勝の横綱照ノ富士に、9日目にして土がついた。殊勲の星を挙げたのは明生だ。

「横綱は大きくて、力も強いので、横から横から攻めようと思った」という、狙い通りの相撲だった。
 
立ち合いは、「あまり余分なことは考えずに、当たろうと思った」と、頭と両手で思い切り当たって突き放した。一瞬浅くモロ差しが入ったが、横綱が抱えて捕まえようとするところを、相手より先に動いた。左の差し手を抜き、右に回って肩透かし。あとはひたすら右方向に回りながら攻め続けた。上手を狙ったがこれはつかめず。相手が左から抱えにきたところで右下手をつかむと、出し投げ気味に右に回りながら振り回した。残されはしたが横綱の腰が伸び加減になったところを逃さず左差し。モロ差し右下手で食いつく形になり、下から下から攻め立てて寄り切った。

「誰とやるにしても、止まっては(自分は)相撲は取れない」。とにかく先手先手で動き回ったことが功を奏した。さらに言えば、横から横から攻めたのは、ヒザに不安を残す横綱に対して、これ以上ない攻略法だったということも言える。
 
ここまで、日を追うごとに調子を上げ、全勝街道を走ってきた照ノ富士。きのうの時点で単独トップとなり、優勝への最短距離に立ったが、この日の一番を見ると、「このあとも相手を寄せつけずに勝ち切って独走V」という見立てはしにくくなったような気もする。
 
明生は元関脇で、立ち合いの鋭さ、その後の動きの速さとも一級品の力士だ。かつ、本人は相撲には直接的な影響はないというが、頭痛を伴うなど、このところ悩まされていた右目の「逆さまつげ」を場所前に手術し、不安がなくなったこともあって絶好調。今場所はこの9日目で勝ち越しを決めたほどで、すでに三役当時の力が戻ってきているといえるが、この日、明生が見せた「照ノ富士崩しのお手本」は、三役陣に勇気とヒントを与えることになったはず。明日から横綱と対戦する三役陣のうち誰かは横綱を食う可能性が十分ある気がするのだが……。
 
もちろん、これから横綱と対戦する力士も相手は横綱一人でなく、ほかの力士と潰し合っている間に、星を落としながらも横綱が抜け出す、という展開もあり得るが、少なくとも今場所の横綱が無敵でないことが見えた今、今後の波乱と大混戦への期待は膨らんできたと言えるだろう。
 
この日を終わって、照ノ富士、明生、朝乃山の3人が1敗で並び、関脇同士の対決に勝った霧馬山、若元春の両関脇のほか、平戸海、北青鵬が2敗で続く形になった。横綱、関脇、平幕(しかも元大関もいる!)が入り乱れての大混戦。さあ、面白くなってきた。

文=藤本泰祐

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