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2023-09-16

【相撲編集部が選ぶ秋場所7日目の一番】貴景勝が正代の意地の前に2敗目。V争いは再び平幕勢が先頭に

貴景勝は正代に押し出されて2敗目。優勝争いトップの座を平幕勢に明け渡した

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正代(押し出し)貴景勝

5日目、6日目とそろって白星を並べ、落ち着いてきたかに見えた大関陣が、この日は再び崩れた。
 
まず、きのうを終わって3勝3敗の五分だった豊昇龍が錦木に押し出されて4敗目。豊昇龍はこれで対錦木戦3連敗。内容的にも怪力の錦木にガッチリと受けられ、攻めあぐねているうちに逆襲を食らう展開が続いており、ちょっと苦手を作ってしまった印象だ。これでまた黒星先行となり、気持ちに余裕を持って取れる状況は遠のいた。いずれ立て直してくるとは思うが、優勝争いからは完全に脱落と言っていい状況になったか。
 
そして、きのうまで優勝争いの先頭に並んでいた貴景勝も敗れた。この日は、対戦成績で5連勝中の正代との対戦。相手は胸を出してくるような相撲なので、大関としては当たりやすい相手かと思われたが……。
 
立ち合いはガツッと当たった貴景勝のほうが攻め勝ったように見えた。しかしこの日は二の矢の攻めが遅れたか、正代が右を差し込みながら押し返す形に。貴景勝はこれを嫌って左からイナしたが、ここで体が離れた段階で、貴景勝の「立ち合いの威力」というアドバンテージは、すでになくなっていた。
 
貴景勝は右から左と張り手を繰り出し、攻めを継続しようとするが、いつものように頭を下げて再度当たっていくような攻めがなく、上体が起きたままで、むしろ張り手は相手の闘志に火をつけただけの結果になった。貴景勝が少し引きを見せたところを、正代が逃さずついていってそのまま押し出し。元大関が現大関に意地を見せる形になった。

「(張り手を)嫌がることなく前に体重を掛けられてよかった。引くことは考えていなかった。あそこで嫌がって引くのではなく、前に出ようという判断はよかった」と正代。これで豊昇龍に続き、今場所2人目の大関撃破だ。

貴景勝は「あしたまた頑張るだけです。(体の動きは、特によくも悪くも)どちらでもない」と言葉少な。まあただ、もともとが、「一番一番、集中して戦うのみ」というスタイルの大関だけに、この1敗が大きく今後に響くことはないだろう。

6日目まで4人いた平幕の1敗勢は、この日は前傾姿勢を崩さず好内容で輝を押し出した熱海富士と、翠富士に立ち合いモロ手突きを払いのけられながらも落ち着いて上手投げで仕留めた髙安の2人が1敗をキープ、優勝争いの先頭に立った。

三役陣では、玉鷲をさばいて大関陣でこの日唯一の勝利を挙げた霧島が貴景勝と星で並んだ。3日目、4日目と連敗したが、ここにきて優勝候補に再浮上してきたか。また、連敗スタートだった若元春が、得意の左四つに組み止めて北勝富士を降し、ここにきて5連勝と調子を上げてきた。琴ノ若は関脇同士の対戦で大栄翔と突き押し勝負になってしまい、腰の備えが浮いたところを突き落とされて3敗目を喫し、一歩後退した。

絶対的優勝候補がおらず、3敗ぐらいまで優勝ラインが下がりそうな感じはさらに強くなったが、現在1敗の平幕勢と現在2敗の三役勢に、優勝争いの顔ぶれは少しずつ絞られてきたか。ここにきての上向き度合いでは霧島、若元春、髙安あたりに勢いがある気はするが、さてどうなっていくのか。

文=藤本泰祐

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