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2023-09-17

【相撲編集部が選ぶ秋場所8日日の一番】“大関ドミノ”で全員黒星。霧島、貴景勝3敗、豊昇龍は5敗目喫す

防戦一方で隆の勝に押し出された霧島。この一番から大関陣は3人そろって敗れることに

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隆の勝(突き出し)霧島

この日は偶然、3人が3人ともあまり合い口がいいとは言えない相手。悪い予感もないではなかったが、まさか3人とも星を落としてしまうとは……。中日8日目、大関陣がドミノ倒しのように、3人続けて黒星を喫した。

まず1人目は、過去1勝8敗と、にわかには信じられない幕内対戦成績の隆の勝と対戦した霧島。一番最近の対戦は昨年の7月と遠く、しかも霧島が勝っており、そこからの霧島の力の伸びを考えると、もう過去の対戦成績はそれほど関係ないかとも思われたが、やはり合い口は生きていた。

立ち合いはむしろ霧島が当たり勝ち、左の突きをグイッと伸ばしたが、それを隆の勝に右からはね上げられると、いっぺんに体が浮いてしまった。隆の勝がそこを右ノド輪で押し、最後はモロ手で突いて突き出し。

「器用なことはできないので、当たって前に出る、自分の相撲を取るしかない」という隆の勝の思い切りと、霧島の今場所少し動きが落ち着かず、バタついたような感じがある部分が共鳴したような相撲となった。きのうを終わった段階で優勝候補に再浮上したように見えた霧島だが、一日で、脱落とまではいかないが、大きく後退となったのは確かだ。
 
2人目は幕内通算2勝2敗、この一年でも1勝1敗の宇良と対した豊昇龍。立ち合い、相手の頭が低いのを見たか、左に変わって叩きにいったが残され、つかまえることもできずに、押し込まれた後の叩きにばったり落ちた。宇良は「主導権を握った?」の問いには「たまたまですよ」、「低く攻めたのがよかった?」の問いには「きょうはそんなことない」と相変わらず取り口については多くを語らなかったが、立ち合いの変化を残されたことで、完全に相手にペースを渡したのは確か。豊昇龍はこれで5敗目、きのう書いたように、いずれ立て直してくる希望はなくはないと思うが、この時点での5敗は精神的にかなりキツいはず。この日も〝勝ちたい〟という気持ちが走った内容になってしまっているだけに、どの時点で開き直っていけるか。
 
そして3人目は貴景勝。この1年で1勝4敗の翔猿との対戦は、両方が突いたり押したりイナしたり、腕を払ったりと激しい相撲になったが、結局は翔猿の間合いでの攻防に終始、動きの中で少し上体が立ったところをタイミングよく突かれて、土俵の外へ押し出された。こちらも、「休まずに、どんどん攻めることができてよかった。引かずに攻めようと思っていた」という翔猿ペースの相撲だった。やはりまだ、そうでなくても合い口の悪い相手を攻め切れるところまでは動きは戻っていなかった、ということだろうか。
 
この日は平幕の髙安、熱海富士はともにしっかり勝って1敗をキープ。三役陣では6連勝の若元春がただ一人2敗で続き(そのほかに平幕で3人が2敗)、霧島、貴景勝といった大関陣はトップと2差となった。
 
トップ集団は少しバラけてきたが、先頭を走る2人が平幕の上、若元春を含めて、1敗勢、2敗勢に優勝経験のある力士はゼロ、ということを考えると、まだまだ後半戦、動きのある展開が待っていそう。きょうは「三役でただ一人の2敗だが」と振られて「いやいや」という感じで笑っていた若元春の気持ちがこれからどうなっていくのか、そして霧島や貴景勝がカド番脱出を決めて目標を切り替える時点で、トップが何敗で、差がどうなっているのか、というあたりが優勝争いのカギとなってくるか。
 
全勝がおらず、混とんとする幕内の優勝争いと対照的に、この日、十両ではデビューから3場所目の新十両大の里が8連勝で勝ち越し。この日まで8番取ったが、相手に攻め込まれること自体がほとんどないという内容は圧巻で、15日制では初の新十両全勝優勝へ、夢は膨らむ。「オフ(取組のない日)がないので、集中力が続く」と、関取の立場が合っているよう。ケガがあって幕内から下がってきた実力者の一山本が1敗で追っており、こちらも後半戦が注目される。

文=藤本泰祐

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