昨年末に所属していたガンバレ☆プロレスを離れフリーとなった岩崎孝樹。キックを主体とする攻撃的なファイトで天龍プロジェクトにおける“居場所”をつかみ、WAR世界６人タッグのベルトも手にした。そんな天プロ参戦のきっかけ作ってくれたのが「第３回龍魂杯」１回戦で当たる拳剛だったという。知られざる二人の関係性とは――。
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――昨年初出場を果たした龍魂杯では、初戦で近野剣心選手を破り２回戦に進出するも佐藤光留選手に敗れています。
岩崎 去年は正直、パッと出た感じだったのであまりわからずに出場した感じでした。それが今回は１年間ずっと天龍プロジェクトでやってきたんで重さが違いますね。これを勝ち抜くと天龍プロジェクトのセンターにいけるわけですから、何がなんでも獲りたい。６人タッグのベルトを保持していたとしても今はまだ、その位置にいないですから。あとはシングルを短期間でこれだけやれる機会がなかった分、自分の持ち味を前面に出せる機会だと思います。自分はもともとシングルプレイヤーだと思っているんで。
――いきなり１回戦でWAR世界６人タッグ王座を持っていた盟友と対戦します。
岩崎 拳剛さんとはずっと対戦したかったですよ。天龍プロジェクトに上がるきっかけが実は拳剛さんで、去年の選手プロデュース興行（NEXT REVOLUTION）があったじゃないですか。あれに出られたのって、拳剛さんが僕を推してくれたからなんです。僕の中では恩人でもありますし、DNAの時に一度シングルでやっていて（2017年10月12日、シアター1010。拳剛がラ・マヒストラルで勝利）、その時にすごく手応えがあった。こうのが好敵手っていうのかって思っていたら拳剛さんもそう思っていてくれたらしくて、あれから何年か経っても名前を出してくれて今に至るんで。だから僕にとってはけっこう大事な人との１回戦になるんです。
――GAINA選手も含めてまったく別の道を歩んできた三人でありながらタイトルを獲るほどに呼吸があったのは、そうした関係性があったからだったんですね。
岩崎 それはあると思いますね。なんか、間が合うんですよ。だからあの二人とはすごく組んでいてやりやすい。それが対戦する側に回ったらどうなるかを、僕自身も見てみたい。本当だったらお互いがベルトを持った状態でやりたかったけれど、逆に考えればチャンピオンチームのパートナーではなくなったことでトーナメントのひとつの試合として集中できると思うので、DNAの時とはまったく違う自分を拳剛さんに見てもらいます。
――WAR世界６人タッグ王座は失いましたが、トーナメント直前にロングバウトで最後まで動けることを確認できたのは大きかったのでは？
岩崎 そうですね。だから一日３試合でも、スタミナは心配ないです。ケガもまったくないし、ダメージがあっても寝たら消えるんで。（トーナメント表を見て）同じブロックにこの人（佐藤光留）がいますよね。結果的に拳剛戦といういいカードを組んでいただけたけど、僕は１回戦で当たりたいぐらいだった。この人と組むことは一切ないんで、常に対角線上にいることによって岩崎孝樹のプロレスを体現できると思うんです。
――５・16新木場で光留選手のIJシングル王座に挑戦し敗れていますが、どのようなものとして残っていますか。
岩崎 あの試合から自分の中で吹っ切れたというのはありました。フリーになってあの試合を経て、プロレスが楽しめるようになりましたね。なんていうか、それまではヘンに気を遣っている自分もいたと思うんです、いろんなものに。たとえば天龍プロジェクトの色に染まろうとした部分もあったと思うんですけど、あのタイトルマッチでそんなの関係ねえやってなったんです。その後、６人タッグのベルトを獲れたのもあの影響があったと僕は思っています。だからこそ、もう一度やらなければと思っていたんで、キッチリと倒して決勝にいきます。僕もミスター天龍プロジェクトを名乗りたいんで。
――そこは光留選手から奪いたい？
岩崎 奪いたいというか、僕はハナっから受け入れていないですよ。何を偉そうに、おまえだけの天龍プロジェクトじゃねえぞって言い続けているんで、ここでキッパリと受け入れていませんって言います。とはいえ、言うのは言うだけのことをやってきているのに対し、僕はシングルで争える実績がない。その実績にするためのトーナメントです。あと、ミスター天龍プロジェクトを名乗るって言いましたけど、同じことは言いたくない。だからさっき、天龍プロジェクトのセンターって言ったっていうのもあるんですけど。そこは優勝した時にどんな言葉が浮かぶかですね。
――わかりました。拳剛、佐藤光留という意味のある相手を撃破して決勝に進んだ場合、誰と優勝を争うと見ていますか。
岩崎 僕は田村男児選手だと思います。最近の試合を見ても、体格差がある相手でも関係なく正面からぶつかって打ち破っているのはハートが強いんだと思います。火でたとえるなら青い炎の方ですよね。反骨心が伝わってくる。こういう選手と試合をしたいなって思っていました。１回戦が２冠王の進祐哉選手ですけど、突破すると見ています。
――男児選手が決勝に上がってきたら、かなり勢いが…。
岩崎 いや、ちょっと待ってください。こっちもものすごい勢いがついているはずですよ、この顔触れの中から勝ち上がってきたら。勢いのある者同士の決勝戦って面白くないですか？ もう、いつもタイトルマッチやメインに出ている同じ選手ばかりじゃない方が、天龍プロジェクトのためにもなる。
――この団体のためになる形を考えていると。
岩崎 フリーになって真っ先にお話をくれて闘う場を提供してくれた団体ですから恩義を感じますし、もっともっと大きくしていくような選手にならなきゃいけない。ここに来ると個性豊かな選手が多いんで、ヨソでの怖いものがなくなりました。60分３本勝負とかほかではなかなか経験できないですし、経験値は高くなっている気がしますね。
――そもそも、なぜ昨年12月にガンバレ☆プロレスを退団しフリーの道を進もうと思ったのですか。
岩崎 もともと自分は集団行動が向いていないんですよ。あとは性格的に、リスクがある中で動いた方が頑張れるというのが大きかったと思います。安定していない方がいい。団体にいれば月に何試合と決まっているけど、いつも同じ人たちとやっているようで物足りなかった。フリーになって10ヵ月経ちましたけど、まったく悔いがない。フリーになってよかったと心の底から思っています。滑ったら切られるから、一試合一試合の重さも違うし。
――ガンプロという団体は、家族的でとても居心地がいいですよね。
岩崎 そうなんです。だから嫌いになったわけではなかったんですよ。ただ、自分の体が一番動く時にいろんなところを見たいという思いの方が大きかった。その意味で、龍魂杯優勝というのはフリーとしてもハクがつく勲章ですよね。フリーは実績を残さなければ生きていけないんで。生き残るための闘いです。（聞き手・鈴木健.txt）
