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2023-11-01

【天龍プロジェクト】天龍源一郎と闘った拳剛だから言える「優勝したら龍魂を背負える?そんな簡単なものじゃない!」【週刊プロレス】

「龍魂杯」制覇を狙う拳剛

“ケンカ屋”拳剛が天龍プロジェクト「龍魂杯」に1年ぶり2度目の出場を果たす。“龍魂”の二文字が刻まれたシングルトーナメント。これを拳剛がどう受け止めているか――これは優勝争いとは別のところで興味深いことだった。そこには、天龍源一郎とシングルマッチで闘った男だからこその美意識があった。ミスター天龍プロジェクトも、キング・オブ・天龍プロジェクトも名乗らずにきた男の“龍魂論”とは――。
◇    ◇   ◇
――昨年は首の負傷により出場できなかった龍魂杯です。

拳剛 去年はセコンドで見ていて、これは出ていたとしても優勝は難しかったやろうなというのが正直なところでした。それほど年々選手のレベルが上がっているっていうのがハッキリわかった龍魂杯でした。それもあって、復帰してからは立ち止まってはいられなくて次へ次へという感じで来ていますね。だから、直前でWAR世界6人タッグのベルトを失っても引きずっていることなく気持ちを入れ替えて臨まんとなっていうのがあります。

――拳剛選手の中で「龍魂杯」の価値はタイトルとは違うものだと思われます。

拳剛 そもそもね、龍魂という言葉に対して果たしてどれだけの選手が意味をわかっているんだ? 正直、そんな気持ちです。過去のことを引っ張ってくるのは反則かもしれないですけど、天龍さんから龍魂を叩き込まれているのって、この中に何人いるのかって思ってしまうんですよ。

――つまり、天龍さんと直接対戦した経験があるということですね。

拳剛 これはただの優勝を争うトーナメントじゃないんですよ。龍魂っていう響きに俺は敏感になります。ハッキリ言って、ほかの選手と一緒にされたくない気持ちが強いです。今、龍魂の意味がわかっているのかって言いましたけど、その答えを言葉にした時点で安っぽくなってしまう。それほど龍魂っていうのは簡単には背負えないんですよね。仮に優勝したところで、それで龍魂を背負ったぞ!って言えるのかって、俺はそういうものではないと思う。だから、龍魂を体現するために頑張る資格を与えられる…それぐらい、俺にとっては重いものなんですよね。

――優勝してすぐ手に入るようなものではないと。

拳剛 もしかしたら…いや、確実に一生手に入らない。だけど「龍魂を背負えるよう頑張ります」と言うことが許されるのが優勝者だという受け取り方です。優勝できなかったら、龍魂を言葉にすることさえ許されない。それぐらい、あの頃に味わった天龍さんと闘うことの恐怖心、葛藤…これも過去の話になっちゃいますけど、龍魂とは苦しいものとして僕の中に残っている。トーナメントには確実に強くて申し分のない人ばかりが出ていますよ。でも、僕と同じ気持ちでその二文字に敏感になっているのは進祐哉以外、どうなんでしょう。新井(健一郎)さんと河野(真幸)さんはまた違った形で龍魂というものを持っていると思いますけど。

――進選手も、天龍さんが現役の頃の天龍プロジェクトに上がっていたという意味で。形として目の前にないものの価値は、その人がどう思っているかによるので、個人差があって当然でしょう。

拳剛 そう。だからどれが本当の正しいものなのかはないのかもしれないですし、俺自身も何が正しいかイマイチわかっていないかもしれない。でも、龍魂に対する気持ちは自分の中でハッキリしているんで。まあ、普段から中途半端な気持ちでリングに上がっているつもりはないんですけど、その意味で違った緊張感は確実にあります。

――1回戦が先日までともに6人タッグのベルトを巻いていた岩崎孝樹選手です。

拳剛 一緒にベルトを持っていた仲間であるのは間違いないんですけど、いい意味でも悪い意味でも協調性があるようなやつじゃないんで、闘いにくいというのはないですね。対角線に立ったら潰し合えちゃう。あと、あのザ・プロレスラーっていうルックスが俺は好きなんで、この業界において大切にしたい選手の一人ではあります。でも、岩崎は世代的にも龍魂の意味はわかってはいないでしょう。彼は彼なりに熱いものを持っているけど、龍魂を背負うとは俺が言わせないですよ。

――天龍プロジェクトに思い入れを持つ拳剛選手にとって、ミスター天龍プロジェクトを名乗る人物はどのような存在になるのでしょう。

拳剛 佐藤光留さんですか。僕の欠場中、光留さん中心に天龍プロジェクトが回っていたのは紛れもない事実ですし今、天プロって聞いて最初に名前が出るのは光留さんでしょうから、ミスター天龍プロジェクトというのは俺も認めざるを得ない。やっぱり、そういう人を超えていかないと俺の人生、意味がないんですよ。その意味では光留さんがミスター天龍プロジェクトを名乗っているのは認めつつ、名乗らせないよ、俺より目立つのはむかつくっていう気持ちと、俺は天龍さんが引退されたあとに挑める上の相手を探していたんです。そこで、こんな強い人が出てきて嬉しかったという気持ちになったのが光留さんで。これは超えられないかもしれない、でも…っていう気持ちが久しぶりにボン!と出てきたのが嬉しかった。

――ミスター天龍プロジェクトを名乗ってもらった方がそうはいくか!という気持ちになれる。

拳剛 矢野(啓太)さんみたいにキング・オブ・天龍プロジェクトって言う人もいて、俺が中心だって言い合っているぐらいの方がやり甲斐があるし、気持ちが盛り上がるんですよね。矢野さんって基本的に昔から変わっていなくて、ようやくそれが受け入れられる団体に出逢えた、時代が追いついてきたっていう感覚で見ているんです。よくぞあのスタイルを曲げずに今日までやってきたなっていう。でも、俺がいる限りはキング・オブ・天龍プロジェクトをそう簡単に名乗らせたくはない。

――名乗っている人の反対側に立っているのが拳剛というプロレスラーなんですかね。

拳剛 あー、そうなっていますよね。そういうのって、名乗ったもん勝ちじゃないですか。こっちも何かを名乗れるんでしょうけど、やっぱりそう簡単には名乗れないし、名乗る自信がない部分もあるんですよね。そこも葛藤であって。

――実際、これほど“天龍歴”が長い拳剛選手は名乗ってもいい立場なのにこれまで言ってこなかったですよね。

拳剛 天龍さんとシングルマッチで闘った特権で名乗れるみたいのって、恥ずかしいやないですか。自分の中でそれはカッコよくないんですよね。天龍さんと1対1で闘ったからこそ…周りが言ってくれる分には、もう喜んでありがとうございますですけど、自分から名乗るもんじゃない。

――なんでも発信されてしまう世の中で、これはやらない方がいい、言わない方がいいと判断できる美意識は絶対に必要です。
拳剛 SNSはやった方がいいって俺もわかっているんですけど、自分がファンの時代にあったら、SNSをやっているプロレスラーにあこがれたかなって思ってやっていないんです。自分の理想とするレスラー像が時代に合っていないと言われながらも、そこをちょっと貫いてみたいっていうのがあって。でも、優勝した先のことに関しては、俺にしかできない表現方法で発言していこうとは思っています。

――龍魂杯を制したあかつきには…を描いているんですね。

拳剛 俺、夢は口に出すべきだと思っているんですけど、これに関しては慎重にいこうと思っています。優勝したらという条件つきで言いますんで。(聞き手・鈴木健.txt)

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