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2024-02-23

【連載 大相撲が大好きになる 話の玉手箱】第16回「癒し」その3

銭湯が大好きな琴勇輝。夏巡業の稽古後、冷たいシャワーを浴びてリフレッシュ

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不慣れ、というのは妙な緊張感を伴います。
大相撲界も新型コロナウイルスの影響で令和2年夏場所が吹っ飛び、巡業もなく、丸々4カ月もポッカリと穴が開いてしまいました。
こんなことはおそらく初めてでしょう。力士たちも、感染を恐れてぶつかり稽古すらできない日が続き、先の見えない不安や、戸惑いできっと心は乱れに乱れ、疲れ果てたに違いありません。
もっとも、年に6回、過酷な優勝争いを繰り広げなければいけない力士たちだけに、心の癒し対策ならお手のもの。
力士たちはどうやって疲れた心を癒し、再生したか。そんなエピソードです。
※月刊『相撲』平成31年4月号から連載中の「大相撲が大好きになる 話の玉手箱」を一部編集。毎週金曜日に公開します。

銭湯でリラックス

稽古、稽古の力士たちは結構、疲れている。平成28(2016)年夏場所、小結を飛び越えていきなり東関脇まで飛び級昇進した琴勇輝(現荒磯親方)は、意外な疲労回復法、というよりも癒し法を明かしている。
 
その意外なものとは銭湯、町のお風呂屋さんだ。もちろん、所属する佐渡ケ嶽部屋にも立派なお風呂があるが、いくら横綱、大関に次ぐ関脇になったからといって独り占めというワケにはいかない。そこで、琴勇輝は使用時間無制限の銭湯に出かけるのだ。

「ほぼ毎日、行く。部屋から15分くらいのところに何軒かあるし、巡業先でも、移動中のバスの中でどこにあるか、調べる。よっぽどの田舎でない限り、5キロ圏内に何かしらありますから。おかげで財布の中は銭湯の回数券でいっぱいです」
 
と話している。
 
風呂の入り方にもこだわりがある。体に小さな泡がまとわりつく炭酸泉を好み、だいたい2時間ぐらいかけてお湯と冷たい水風呂を交互に入り、その間、2リットルの水のペットボトルを空にする。

「最長で4時間ぐらい、入っていたこともある。ただ、何も考えず、ボーッとお湯に入っているだけなんですけど、それが貴重なんです」
 
こうやって心身のメリハリをつけ、あの強烈な突き押しにつなげるんですね。ちなみに、この新関脇の場所の琴勇輝は、惜しくも7勝8敗と負け越したが、7日目に横綱鶴竜(現音羽山親方)を銭湯パワーで押し出して勝っている。それにしても、4時間も風呂に入っていたら、ふやけないかなあ。

月刊『相撲』令和2年7月号掲載

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