12・31後楽園ホール大会を控えた女子プロレス団体「アイスリボン」のインターナショナルリボン王者・藤本つかさ&つくしが師匠である〝飛翔天女〟豊田真奈美さんに、2年半ぶりとなるベルト奪取の報告をおこなった。そこでアイスリボンのスーパーバイザーでもある豊田さんは「いま団体が多過ぎて、それぞれみんなベルトを巻いている。何が一番価値のあるの?って。だからつっかとつくしには(リボンタッグを)一番価値があるベルトにしてもらいたい」とエール。豊田さんが引退した11月3日に第43代タッグ王者となった2人は「やります!」と力強く宣言した。
引退した飛翔天女と、飛翔天女二世と言われた藤本、豊田さんとプロレス界のママと慕うつくし。2年半という月日を経て、3人がそろったのは12月20日のことだった。
つくし「豊田さーん、やっとベルト取れました!」
豊田「頑張ったねぇ。SNSで見てたよ」
藤本「それも11月3日に取れたんです!」
豊田「それも知ってる。何なんだろうね、11月3日って」
藤本「運命ですよね、きっと」
会うなり、満面の笑顔を浮かべながらこんなやり取りをかわした3人。藤本&つくしのドロップキッカーズは11・3大阪で雪妃真矢&世羅りさを撃破し、リボンタッグ戴冠。2人によるタッグ王座戴冠は約7年ぶりで、つくし個人としては2年半ぶりのベルト。月日の長さだけをとっても今回のベルト奪取の重みが伝わってくる。豊田にとっては妹のような存在である藤本と、娘のような存在であるつくしだから、引退した飛翔天女が自分のことのように喜ぶのも理解できる。
だが、この喜びの裏にはもう少し複雑な背景があった。
何度も出てきている〝2年半前〟という時間。具体的に言えば2017年7月。つくしはある事件を起こし、無期限の活動休止に追い込まれた。
この年の2月に豊田さんは同年11月3日に現役引退することを表明。そして6月、妹である藤本と娘であるつくしに対して「私を潰してくれ」とメッセージを送った。つまり、引退試合の相手として2人のどちらかを選ぶことを示唆したのだ。
だが――つくしは事件を起こし、豊田さん引退試合にかかわることはできず。11月3日も母のラストマッチを思いながら、埼玉・蕨にあるアイスリボン事務所にいた。
‘17年大みそかに再デビューという形で再起を果たしたつくし。だが、普段は明るく、能天気な彼女もこの時期ばかりは気後れや重圧があったのだろう。再スタートを切ったあとも本来の力を発揮できず、ICE×∞の青いベルトも、トライアングルリボン(3WAY)の黄色いベルトも巻くことはかなわなかった。
つくし「今回こそ取らなきゃ、もうダメだなとは思いました。いろんなことが重なって、11月3日になったので、ここしかないなって」
事件が起きたこともあって、あえて組むことを避けていたというドロップキッカーズ。それでもつくしが自ら挑戦の名乗りを上げたから、藤本も呼応。リボンタッグ奪取に動いた。今年9月の出来事だった。
当初、藤本&つくしがタッグ王座に挑戦する大会は10月12日、後楽園ホール大会だった。だが、この数日前に日本列島を台風19号が襲った。じん帯な被害をもたらした自然災害によって大会中止を余儀なくされたアイスリボン。同大会では、大みそかに引退するテキーラ沙弥の引退試合もおこなわれる予定だったが、前代未聞の引退延期となった大会でもある。
大会は中止となり、ドロップキッカーズによるタッグ挑戦の機運も少なからずトーンダウン。しかし、2人の意欲が下がることはなく、ふたたび機運を高めた。これによって再び挑戦の機会を得た。
それが11月3日。これは2年前に豊田さんが引退した日。豊田さんと藤本が初めて出会ったのも2009年の11月3日で、つくしのターニングポイントにもなった藤本とのフルタイムドローを演じたのも3年前の同じ日だった。
藤本「アイスリボンにとって11月3日は豊田さん記念日なんです。日本の祝日にしてほしいぐらい(笑)」
その日に藤本とつくしはリボンタッグのベルトを奪取。激闘のなか、つくしは「心が折れそうになる場面もあったけど、豊田さんの顔が頭に浮かんで頑張ることができました!」。何度も涙を流したつくしがようやくつかんだ嬉し涙のベルト戴冠。やっと手にした復活の証だった。
そのベルトを持って、豊田さんのもとをやっと訪れることができた。こうして3人がそろうのも2年半ぶり。喜びの報告に始まり、いい感じに酔われた豊田さんのパンチの効いた飛翔天女語りに、つくしの適当トーク、藤本の鉄板婚活ネタetc…約4時間、3人はくだらない笑い話も交えながら笑顔の時間を過ごすことできた。
豊田「いろいろあったけど、やっとベルトが取れるまでになってくれた。でも、いま一生懸命、頑張ってるからそうやって笑い話にできるんだから。頑張ってれば、見てくれてる人は必ずいるんだから」
「やだ泣いちゃう!(笑)」。こういって涙するつくしに豊田は「いろんなことをやらかしたかもしれない。だけど、一度も道を外れたことない人よりも、自分が道を外れたことを知ってる人のほうがちゃんとした人間になれるから。人生、何でも意味があるんだよ」とようやく再起を果たした娘に対して愛あるエールを送った。
さらにタッグ王者である2人には飛翔天女として一時代を築いた豊田さんらしい、決して簡単にはクリアすることができない課題を貸した。
豊田「(リボンタッグを)一番価値があるベルトにしてもらいたい。あのベルトが欲しい!って思うベルトに2人でしていってください。私たちの時はWWWAタッグを取って、WWWAシングルを巻くっていう目標しかなかった。いまは団体が多すぎて、どのベルトの価値があるの?って。どこかの団体が買われたからって儲からないと思ったらすぐ手を引くだろうし。ホント意味がわからない状態。だからこそ、つっかとつくしには期待してる。(2人が)努力してるのは知ってるし、こうして慕ってくれてるから、それはかわいくて仕方ないから。私は何かをしようと思っても、もう引退した身だから別に何もできない。応援することしかできない。ケガをしないで頑張って、(ベルトの価値を上げるという課題を)実現してほしい」
豊田さんからのゲキにつくしは「うれしいし、もっとこれから頑張らなきゃなって思ってました。頑張ります。もっともっと」と誓いをたて、藤本は「豊田さんにこう言っていただいたからにはやらなきゃいけないですよね。アイスにレギュラー参戦してもらってる山下(りな)とか朱里ちゃんとかフリーの選手と所属の新しいタッグとかも面白いと思うし。ドンドン防衛戦をやって、ベルトを価値を高めていかなきゃって思います」
そのためにはまず12・31後楽園で17歳・鈴季すず&16歳・星いぶきというティーンズタッグとのV2戦をクリアしなければならない。「アイスリボンを新しい光で照らしたい!」と叫ぶ若い2人はリング上はもちろん、リング外でもあの手この手で王者を揺さぶるなど大みそか決戦に向けてヤル気を爆発させている。だが、藤本も「未来だったら私にもある」と引くつもりはない。豊田さんからの課題を果たすため、ドロップキッカーズの物語を紡ぐため、そしてアイスリボンを盛り上げるために藤本&つくしはリボンタッグのベルトを死守し、2020年も突っ走ることを約束した。
「RIBBON MANIA2019」
★12月31日(火)東京・後楽園ホール(11:30)
⑤ダブルメインイベント~テキーラ沙弥引退試合38人掛け
テキーラ沙弥vs38選手(1人1分)
④ダブルメインイベント~ICE×∞選手権試合(30分1本勝負)
<王者>雪妃真矢vs尾﨑妹加<挑戦者>
③リボンタッグ選手権試合(30分1本勝負)
<王者組>藤本つかさ&つくしvs星いぶき&鈴季すず<挑戦者組>
②世羅りさvs朱里
①ガントレットタッグマッチ
参戦チーム=藤田あかね&朝陽、弓李&本間多恵、松屋うの&ラム会長、山下りな&トトロさつき、柊くるみ&Yappy、星ハム子&バニー及川
その他大会詳細はアイスリボン公式サイト(http://iceribbon.com/)で。
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