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2017-06-27

帝王・髙山善廣に届け――鈴木秀樹が「似合わない」ノーフィアー・ポーズに込めた思い

大日本5・5横浜文化体育館大会での岡林裕二戦後に取った、右指を前方に突き出すポーズ

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 週刊プロレスの人気連載「王者の主張」。6月28日号は大日本プロレスのBJW認定世界ストロングヘビー級のベルトを巻く鈴木秀樹が登場! マット界屈指の偏屈者にベルトにまつわるあれやこれやを語っていただいているので、ぜひご覧いただければ幸いです!

 そんな鈴木に、最近気になっていたことを聞いてみた。

 大日本5・5横浜文化体育館大会での岡林裕二戦後に取った、右指を前方に突き出すポーズ。あれは一体なんのポーズで、どんな意味が込められているんだろう。同じような疑問を覚えたファンも多かったのではないだろうか。

 答えはノーフィアー・ポーズ。現在、長期欠場中の帝王・高山善廣へ、鈴木なりの思いを込めた姿だった。


「こないだの小橋さんの興行(6・14後楽園)で石川(修司)さんともやったんですけど、やっぱり似合わないなって(苦笑)。あれはやっぱり髙山さんのものですね。モノマネするのは恥ずかしいから早く本人帰ってきて、やってもらいたいです。僕らじゃ似合わない」

 こんな言葉で帝王の帰還を熱望した鈴木にとって、高山は間違いなく「特別」な存在だった。

写真は2015年10月1日のドラディション後楽園大会

 リング上での接点はわずか2度。

 2014年8月29日のZERO1宇都宮大会のタッグマッチ(髙山&田中将斗vs鈴木&横山佳和)と2015年10月1日のドラディション後楽園大会の6人タッグマッチ(髙山&NOSAWA論外&バファローvs鈴木&船木誠勝&LEONA)。ともにタッグマッチだったから、壮絶な死闘になったわけでも、完全燃焼するぐらいにぶつかり合えたわけでもない。

 それでも鈴木は言う。

「こっちが勝手に思ってるだけですけど、髙山さんは特別っていうか、縁がある人だって」

 北海道出身の鈴木は専門学校卒業後、上京。都内の郵便局に勤めた。その傍ら、UWFスネークピットジャパンに通い、〝人間風車〟ビル・ロビンソンからキャッチ・アズ・キャッチ・キャンを学んだのは有名な話し。そんなデビュー前の鈴木がいる蛇の穴に、同じくロビンソンに学んだ髙山も練習に来ていたという。

「僕がスネークに入ったとき、髙山さんがミルコとやるかやらないかみたいな話が出てたみたいで。(試合は)結局、流れちゃったみたいなんですけど、大江(慎)さんを相手にスパーリングやって、ミットにヒザ蹴りやってっていう姿をずっと見てて。(その後、髙山は脳こうそくを患ったかが、リハビリを重ね、復帰を目指したが)しばらくして、高山さんがまたジムに顔に出して、復帰に向けての練習に来られてたんですよ。ブリッジやって、サンドバックやってって。その時、僕は押さえ込みの練習してたんですけど、宮戸(優光)さんが『髙山も入れよ』って声かけたら、『わかりました』って。髙山さんが下になって僕は押さえ込んだんですよ。当時、80キロぐらいだったんですけど、押さえてすぐ、ベンチプレスを上げるみたいにボン!って飛ばされて。スゲーなぁって思いました。でも、それぐらいから髙山さんは名前覚えてくれたんですよ。ただの会員なのに、会うと必ず鈴木君って言ってくれたんです」

鈴木のデビューと髙山のIGF初参戦が重なった2008年11・24名古屋。その直前にはスネークピットジャパンで合同練習がおこなわれ、故ビル・ロビンソンの指導を受けていた

 2014年3月、鈴木はデビューしたIGFを離れて、フリーに転向。ZERO1を皮切りにWRESTLE‐1や現在の主戦場である大日本プロレスなどさまざまなリングに上がり大暴れ。前述した3団体では、それぞれのシングル王座を獲得するなどフリーの強豪というポジションを確立している。

「スケールは小さいと思うんですけど、イメージしてるのは髙山さんなんですよ。新日本でNWFを取って、IWGP取って、NOAHのGHCヘビーを取って、全日本で三冠を取ってみたいな。いろんな団体に行って、そこのチャンピオンになって、また次の団体行ってチャンピオンになってっていう」

 今年3月、鈴木は大日本のストロングヘビー級王座を戴冠。じつは髙山を含めた何人かで「ステーキに行こうって話をしてたんですよ。296さんとかと一緒に、『秀樹がベルト取ったら行こう』って。それで横浜文体の防衛戦終わったら行こうって話してたんですよ」。鈴木が岡林相手の防衛戦をおこなったのが5月5日。髙山はその前日の5月4日、DDT大会で首を負傷。頸髄損傷および変形性頚椎症と診断された。

「(レスラーだから)こればっかりは仕方ないですけどね。例えば、僕がどこかの試合でなってるかもしれないわけですし。僕が頑張れって言ったって、高山さんの体が良くなるわけじゃないですし、安っぽくなんかするのは嫌なんで」

 だから誰にもその理由を明かすことなく、ノーフィアーポーズを決めたし、次の防衛戦が決まっている7・17両国でも勝って、ノーフィアー・ポーズをやるつもりでいる。

「髙山さんは自分がアマチュアの時から知ってるっていうのもあるし、髙山さんが作った道を歩こうと思ってるので。やっぱり特別(な存在)ですよね。(ノーフィアー・ポーズは)別に勝手にやってるだけだし、似合ってねぇなって思います。やっぱり本家がやってくれないと。僕が調子こいてまたやっちゃうから、早く戻ってきてほしいですね」

 恐れ知らずの帝王はきっと帰って来る。

 その日を信じて、マット界の偏屈者はいつかまたどこかで「似合わない」ノーフィアー・ポーズを見せているはずだ。

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