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2025-03-11

【相撲編集部が選ぶ春場所3日目の一番】阿炎が琴櫻も倒し3連勝。カド番大関琴櫻は試練の2敗目

阿炎を攻め込みながら、一瞬の動きで逆転され、琴櫻は黒星先行の2敗目。カド番の今場所、何とかこの苦境を乗り切ってもらいたいところだ

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阿炎(押し出し)琴櫻

途中までは、いいペースで攻め込めているかと思われたが……。

カド番大関の琴櫻が、小結阿炎に敗れ2敗目。また一つ、黒星が先行することになった。
 
初日に敗れ、2日目に初勝利を挙げて星を戻した後の大事な3日目。この日の相手の阿炎は、初日には新横綱の豊昇龍に圧勝している実力者で、この一年の対戦成績も琴櫻とは3勝3敗の五分という難敵だ。
 
この2人の対戦は、阿炎が突っ張って出て、琴櫻が下からあてがうという展開になることがほとんど。それだけに、その形からどちらが圧力勝ちし、相手の上体を起こせるか、がポイントだといえた。
 
おそらく大関にもその意識はあったのだろう。この日は立ち合いから積極的に前へ圧力をかけて出た。立ち合い直後に、突いてくる阿炎の右ヒジに左手をあてがってはね上げ、そのまま左で突くようにして赤房下に追い詰める。阿炎は右へ右へと回り込んでかわすのが精いっぱいで、ここまでは完全に相撲は琴櫻ペースかと思われた。
 
しかし、そこでそのまま終わらせないのが阿炎の阿炎たるゆえん。きのうの翔猿戦でも見せていたが、一方向だけでなく、右にも左にもサッと回れるという機敏な引き足が、この後の展開を一変させる。
 
琴櫻が左で押してくるところを右へ右へと回り込んでいた阿炎は、次いで琴櫻が右手を使ってきた一瞬をとらえ、サッと左に回ってこの手のヒジのあたりをはじく。このタイミングのいい動きに、それだけで、琴櫻は一瞬横を向く形になってしまった。阿炎はもちろんその機を逃さず、一気に下に入って押し出し。

「(琴櫻が)横を向いたのが見えたので、しっかり押していった。しっかりついていけたので。集中できているから、体の動きがいいと思います」と阿炎。
 
今場所は、場所前に食べ物にあたり、体調を崩して体重が落ちるという出来事もあったというが、これで初日の豊昇龍を含め1横綱1大関を撃破しての3連勝。残りの横綱・大関戦は大の里だけなので、今場所序盤の台風の目になったのみならず、自らが優勝候補の一角に浮上してきたといえる。

「思い切りがいいのがいいんじゃないかと思います」(阿炎)

とノッてきており、あす以降もどこまで暴れてくれるかが楽しみだ。
 
一方、心配が募るのが、これで再び黒星先行となった琴櫻だ。綱取り場所となった先場所にまさかの5勝10敗の大敗となり、迎えている今場所のカド番。もちろん本人は何も口には出さないので、どこがどうなっているかは周囲には分からないのだが、先場所と、そして今場所ここまでを見る限り、何らかの体の不調を抱えながら戦っている可能性は低くない。この日黒星が先行し、カド番脱出に要求される残り7勝5敗は、普段の琴櫻なら造作もない数字だろうが、体にどこか不調を抱えているとすれば、実力者の揃っている今の幕内上位では、予断を許さない数字かもしれない。
 
そんな想像はしたくもないが、万一大関陥落となれば、目標としている祖父の先代琴櫻の地位(もちろん横綱)に並ぶには大きな遠回りとなる。果たして、体のタフさと気持ちのタフさが同時に要求されるこの苦境を切り抜けていけるか。27歳の角界のサラブレッドに、試練のときが来たようだ。

文=藤本泰祐

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