綱取りを懸けた昭和56(1981)年名古屋場所初日、「ウルフ」の前に立ちはだかったのは、「ポパイ」と呼ばれた平幕隆の里だった。叩き込みで土を付け、新横綱の翌秋場所も上手投げで破り休場へと追い込んだ。
写真上=59年初場所千秋楽相星決戦。得意の右四つ、左上手で千代の富士と胸を合わせ高々と土俵の外に運んだ。隆の里にとってはこれが最後の優勝となった
写真:月刊相撲
昭和の終わりから平成にかけ、
「独走時代」と言われるほど
他を寄せつかなかった千代の富士。
スピード感あふれる速攻相撲と、
相手を叩きつけるパワーを武器に、
新旧の名力士たちとともに土俵を沸かせた。
※平成28~30年発行『名力士風雲録』連載「ライバル列伝」を一部編集。毎週金曜日に公開します。
研究熱心で、とりわけ千代の富士にライバル心を燃やした。録画したビデオテープを擦り切れるほど見て、攻略法を徹底的に研究。「千代の富士に勝つということは、3勝分ぐらいの価値がある」。その成果は、破竹の勢いだった56年名古屋場所から57年秋場所にかけての8連勝に表れる。
横綱2代若乃花とは同期でありながら、幕下時代から糖尿病に苦しむなど大きく水を開けられた。若乃花の引退後に30歳で横綱に昇進。右四つがっぷりからの力強い吊り寄りを武器に、型にはまったときは無類の強さを見せた。同じ右四つの千代の富士には、体力、パワーともに勝る。緻密な攻めで左上手を取らせぬよう、胸を合わせて四つに組めば、その怪力の前に千代の富士はどうすることもできなかった。
自身が横綱昇進を懸けた昭和58年名古屋場所からは、4場所連続の千秋楽相星決戦となる。秋場所では豪快に吊り出し、双葉山以来の新横綱全勝優勝(15日制では史上初)を成し遂げた。相星決戦の結果は隆の里の3勝1敗。横綱昇進後の対戦は3勝3敗の五分だが、ウルフにとっては最後まで天敵だったに違いない。
『名力士風雲録』第2号千代の富士掲載
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