もともと予防医療に携わるベンチャー企業の最高研究開発責任者を務め、現在も徳島大で癌やアルツハイマーの早期発見にかかわる研究を行っている加治佐氏。そんな経歴の人物がなぜ野球のトライアウトイベントを主催するに至ったかについては、大学時代の経験が影響している。
私は鹿児島のラ・サール高出身で、入学当時は軟式野球部しかなかったのですが、甲子園へのあこがれから硬式野球部をつくりました。3年夏に初めて公式戦に出場し、大学でも硬式野球を続けたいと思い、早稲田大の野球部に入部したのです。
しかし、オフに地元へ戻ったところ、高校の監督から「野球部をつくったエースがそれでは後輩に示しがつかない」と、東大への再受験を勧められました。私自身、受験勉強を頑張らなかったうしろめたさもあったので、早稲田大を退学し、翌年東大に編入しました。
そこで再び野球部に入ろうとしたのですが、当時は一度野球部に所属した者は他大学の野球部に所属できないとの規定があったのです。
私としては部員と認められず試合に出られなくても練習に参加できれば構わないという覚悟でしたが、周囲の方の後押しによって部員として認められ、2年時から公式戦に出場できることになりました。念願の神宮のマウンドでも投げることができましたが、当然、両大学関係者、連盟の方には大変な迷惑をかけましたし、私の知らないところで動いてくださった方も多くいました。大学卒業後は見る側になりましたが、いつか野球界へ恩返しをしたいという思いはずっと抱いたんです。
周囲の支援により野球を続けられた経験が、「WorldTryout」の理念に息づいている。ただ、支援の対象は現役プレーヤーだけではない。今後の展望として、引退を決めた選手や、医療や科学の立場から野球に携わる研究者など、野球界広範の人々をサポートしていく展望を見据えている。
WorldTryoutの2つ目の柱が引退した選手のキャリア支援です。
現在、セカンドキャリアという言葉にはネガティブなイメージがつきまとっています。しかし、例えば育成選手が一般企業で1000万円プレーヤーになることはキャリアアップと言えるでしょう。実際に保険業界では、元プロ野球選手として名を広めながら、同時にスキルアップして成功を収めている方が多くいます。
そのように、新しい業界で活躍できるスキルを身につけるためのサポートを行いたいと考えています。中にはどうしても野球に携わりたい方もいるはずです。そうした方には、経験を生かした起業の支援もあり得るでしょう。
ゆくゆくはトライアウトイベントの同会場でアスリートを対象とした就職イベントを開催するなど、人材派遣会社と協力した企業と元アスリートのマッチングも視野に入れています。
3つ目の柱はスポーツサイエンスの支援です。
私はこれまで予防医療として涙などの体液で血糖値やアドレナリンを測るセンサーの開発を行っており、これを野球に生かしたいと考えています。
例えば、緊張感のある試合中は練習時よりも多量のアドレナリンが出るため普段以上の力を発揮し、それが故障の要因になることがあります。つまり、試合時のアドレナリンを計測することが故障予防につながるかもしれません。
とは言え、実際の試合で機械をつけ計測することは許されないでしょう。しかし、勝敗の関係しないトライアウトでならば、そうした計測も不可能ではありません。実際に、今年のトライアウトから承諾を得た選手にはセンサーをつけて試合に出てもらう予定です。20年間行ってきた研究と、好きな野球が融合することは、私にとって大きな喜びでもあります。
もちろん、私の研究だけでなく、動作解析を行っている方など、さまざまな研究者にベンチに入っていただいき、活用してもらいたい。高校生から、元プロ選手、外国人選手と、さまざまな選手を対象としたデータを収集できる貴重な場となるはずです。こうした点からも野球界の発展に寄与できればと思います。
こうしたさまざまな希望を抱いてはいますが、WorldTryoutの第一義はプロ野球界を目指し真剣勝負する場を増やすことです。
そのためにも、まずは今年のイベントを成功させ、野球ファン、関係者にこうした場があること知っていただきたい。それが今後の継続、そして発展につながっていくと期待しています。
文◎ベースボール・クリニック編集部
「WordTryout」公式ホームページ
https://worldtryout.com/
株式会社WorldTryout代表取締役CEO加治佐平氏
《プロフィル》
加治佐平(かじさ・たいら)
1979年生まれ。ラ・サール高では95年に硬式野球部を設立し、96年夏の鹿児島大会に初出場し16強。早稲田大理工学部に入学し9月まで野球部に所属(退学)。99年に東京大農学部に入学し、2年時より公式戦に出場。東京大大学院農学生命科学研究科卒業。博士(農学)。三菱レイヨン株式会社で研究員を務めたのち、東京大工学系研究科の特別研究員となる。2015年、東京大承認のベンチャー企業、株式会社PROVIGATEを創業、19年まで最高研究開発責任者を務める。19年、株式会社WorldTryoutを創業、代表取締役CEO就任。同年より徳島大ポストLEDフォトニクス研究所特任講師となる。
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