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2020-03-02

【陸上】国学院大・土方&帝京大・小森~それぞれの東京マラソン~

日本人学生歴代3位タイの記録で学生トップの国学院大・土方英和、そして30km付近まで善戦を見せた学生2番手の小森稜太(帝京大)。し烈な東京五輪代表争いのなか、ふたりは東京マラソンで新たな一歩を踏み出した。

写真上=東京マラソンで日本人学生歴代3位タイ、学生トップの28位に入った土方(左)と学生2番手で41位の小森
撮影/田中慎一郎(陸上競技マガジン)

胸に込み上げてきた思い

 歯をぐっと食いしばり、全力でフィニッシュラインに飛び込んできた。東京マラソンで学生トップとなった国学院大の土方英和(4年)が戦っていたのは、ほかの誰でもない。自らが掲げた2時間10分切りの目標を達成するために最後まで腕を振り、脚を動かした。ラスト1km付近ではコース脇から大学の後輩、同級生らの「土方、頑張れ!」という熱のこもった大きな声援を耳にした。レース直後にそれを思い返すと、肩を震わせて、感謝の涙をこぼした。

「本当にきつかったのですが、沿道の声援が力になりました。最後まで走り切れて、目標を達成することもできました」

 初マラソンの記録は、日本人学生歴代3位タイの2時間09分50秒。堂々たるデビューである。

 本格的にマラソン練習を始めたのは、1月の箱根駅伝が終わってから。主将として花の2区を走り、同大初の総合3位に貢献すると、すぐに気持ちを切り替えて、国学院大の前田康弘監督にマラソン用の練習メニューを作ってもらった。2月中旬に就職先であるHondaの寮に移ってからも黙々とひとりで走り込んだ。レースの4日前からは走り慣れた国学院大のトラックで最終調整をこなし、本番を迎えた。

 展開は予想どおり、序盤から高速レースとなる。

「いけるところまでいって、きつくなってからどれだけ粘れかどうかだと思っていました」

 中間点付近までは第2集団に食らいついき、従来の日本記録(2時間05分50秒)ペースでタイムを刻んだ。ただ最後まで脚が持つのか、不安もよぎった。差し込みもあり、口も少し開いた。30km手前で競っていた同じ学生の顔を見ると、きつい表情だった。

「帝京大の小森(稜太)君(4年)には勝たないといけないと思いました」

 そのあと、ライバルはペースダウンしたが、土方だけはもうひと踏ん張りした。35km付近のゲキに励まされた。

「浦野(雄平)、青木(祐人)に続かないと!」

 国学院大の石川昌伸コーチの声である。4年間切磋琢磨してきた同期の浦野は2月22日の日本選手権クロスカントリー競走で優勝し、青木は2月2日の丸亀ハーフマラソンで学生勢2番手となる1時間01分32秒で国学院記録を更新。3年生から主将を務めてきた土方の頭には、仲間の顔が浮かんだ。

「僕だけが失敗して終わるわけにはいかない。その気持ちも粘れた要因のひとつです」

 学生最後のレースを悔いなく終えると、すぐに気持ちを切り替えた。実業団で目指すのは、2024年パリ五輪のマラソン日本代表だ。

「いい一歩を踏み出せましたが、まだまだ改善点はあります。トラックでスピードを強化し、マラソンの準備をしたい」

悔しさを糧に次のステージへ

 一方で、学生2番手でフィニッシュした小森は、悔しさをにじませていた。

「2時間11分台が目標でした。ついていけるところまでいこうと思ったのですが……」

 30km付近まで土方とともに学生記録を更新するペースで粘っていたが、34km過ぎから失速し、2時間12分18秒でフィニッシュ。マラソンの練習不足が影響し、耐えきれなかったという。ただ、東京マラソンを糧にして、実業団のNTNで成長することを誓っていた。

「今シーズンは2時間10分切りが目標です。将来的には世界で勝負がしたい」

 五輪代表の最終枠を争うトップランナーにまじり、学生たちも存在感を示した。

文/杉園昌之

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