――対話を重視する方針だったり、学生に自分で考えさせる力を養うというところにフォーカスしてこられたと思うのですが、あらためて、そのことが大事なんだと監督が思われたのはどんなときですか。
鳥内 逆の立場で考えたらいいねん。意見もっているのに意見を聞いてくれないとか、言うても跳ね返されるとかね。それやったらおもろないでしょう。本来なら自分で考えてやるのがおもろいねん。それをあまりにもシャットアウトされたらおもろないやん。だから、それを学生本人が思ってるやり方をやってみて、だめだったら、どうしようかと。考えてもらうのも大事やと思うんです。
――それを強く指導者として心にとめたのはどういうタイミングだったのですか。
鳥内 自分が考えて押しつけとったときはしんどいですよね。本人がやりたい言うてたら、それで考えてやってくれと、うまくいかんかったら、そんときまた考える。僕はさぼってるだけです。お前勝手にやれ作戦です。(会場笑)
――アメフト界全体で、よりメジャーなスポーツになっていけたらと思うのですが、そこで地上波というのは置いといて(笑)、監督が課題だと考えるのはどういうところですか。スター選手が必要とか…
鳥内 スター選手もいるんですけど、一般の人がなかなか見れないですよね。受信料とってんねんから、ちゃんとやってください。
――先を考えずにやれた今シーズンだったと思うんですけど、今までのシーズンとの違いというのはありましたか。
鳥内 (今年の4年生は)1年生、2年生、3年生のときに甲子園ボウルに連れていってもらっている。そういうときはいつも、上級生の努力を見ていないんです。下級生のときは授業が忙しくて。それで上級生になったときに、「行けるんやろうな」という雰囲気でスタートしたときはいつも苦しむんです。前にもそういうことがありました。それをうまいこと伝えていかないとまたボコられるんちゃうかなと。
――今シーズン、「関学を背負って」「青い血を」ということをよくおっしゃられていたと思うのですが、監督自身が関学を背負って力を得た瞬間やゲームはありましたか。
鳥内 それは自分が浪人していたときに見たリーグ戦やね(1977年京大戦、「涙の日生球場」)。あの大きなビハインドから逆転した。自分が学生のときも2回、プレーオフを経験している。4年のときも(甲子園ボウルをかけた)京大戦で圧倒的に京大が強くて、関西学院の連続出場が途切れるかもしれないというときもあったので。結局、負ける覚悟を含めて、えげつないパワーがでんねん。それぞれ1年から4年までみんなが、「ああ関西学院を背負ったな」「青い血が流れているな」となるんです。
――28年間ほとんどお休みすることなく続けてきたというのはすごいことだと思うのですが、健康面で配慮されたりしていた部分はなにかありますか。
鳥内 ないけど…体が丈夫なんです。インフルエンザかかったけど病院いかへんで治ったし。怒られましたけど。風邪とか病気で休んだことないんで。ヘルニアだけ一度ありましたけど、それもグラウンド横に車で運んでもらって試合をやりました。
――ご家族の支えというのも大きかったかなと思うのですが、家族に向けて一言いただけますか。
鳥内 家内のおやじさんも高校野球の球児を教えていたので、それと同じようなのと結婚したので、「家にいなくて大変ですね」と言われても「いいです」って言うてましたからね。当たり前やと思ってたんでしょう。こんなん言うたら怒られますわ。まあまあ、自分の子供をちゃんと育てんと、よその子供を育てました。
――西日本代表戦の結果が今シーズンで11連勝となりました。この4年間、で立命館に4勝。勝負どころで勝ち続けられた準備、秘訣、伝統など、監督はどんなところに勝負強さと感じていられるでしょうか。
鳥内 勝負強さというよりも、個人個人が学生王者を目指している、という感じだったらちゃんとやるんです。リーグ戦負けたときでも、まだチャンスがあるということで気持ちは復活できます。それで予定通り、復活してくれた。何人かのすごいプレーヤーだけで勝てるわけちゃうねん。オフェンス、ディフェンス、キッキングと全部があって。そういう迫力で、ウチ以上に相手チームにミスが起こってきた。そういうことちゃうかなと。
――28年間、お忙しい監督生活をされてきたなかで、誰に一番支えられたなというのがありますか。
鳥内 ないよそんなもん(笑)。普通どおりに28年間やってるから。これは皆、うちのルーティーンや。(支えられるのは)ありがたいですけどね。
――特にどういうとき(に支えられた)というというのはないですか。
鳥内 負けたときは年がら年中暗いみたいやけどね、それは。だから勝たなあきまへんねん。
――安全性という点で、ライスボウルで1回生の選手が外国人選手と当たるのが危ないというようなお話をされていることがありましたが、あらためて、ライスボウルに関してはどのように思われていますか?
鳥内 今、この立場でいうのはあれなんですが、もともとライスボウル自体、僕らのときは東西学生のオールスターだったんです。社会人チームが発展してきたということで、ライスボウルを社会人に譲るというか、学生チャンピオンと対戦するということになった。最初は学生のほうが強かったんですけど、途中、ぼろぼろになって。圧倒的に今は社会人のほうが有利なんです。普及発展に十分尽くしたんちゃうかなというのが、僕の意見なんです。
小野 今の点に関しては、去年もライスボウルが終わったときに、監督からそういうお話をさせていただいて、報道もありました。そして今年のライスボウルを経験して、チームとして正式に要望書を関西学生連盟の方に出させていただこうと検討しています。
――監督にとってファイターズとはなんですか?
鳥内 1978年に入部してから40年、人生の3分の2を過ごしてますからね。まあ人生みたいなもんですね、結局。知らんけど。最初はここまでやる予定はなかったけどこうなりました。
――さきほどいったん休憩とおっしゃったんですけれども、まだまだアメフトに携わる情熱は失われていない、いつかは、というお考えはあるのでしょうか。
鳥内 いろんな競技において指導の仕方を啓蒙したいというのはあります。野球もそうなんですけれど、自分の可能性をわからないまま大学まで来ている子がようさんいてるんですよ。なにかの分野の得意技が発見できたら得なんやけどね。もっとうまいことできないかなあと思います。そういうことで、なんかできひんかな、力になれへんかなと思ってます。こんだけファイターズやっとって、よその大学の指導というのはないですけど、意見言えいわれたら言いますよ。
――後任の監督については1月下旬ごろとリリースされていますが、後任の監督、コーチングスタッフに望むことというのはどんなことですか。
鳥内 僕のやり方を全部真似するんじゃなしに、学生を大事に、学生の人間的な成長を手伝うということ。そのなかでしかなかなか勝っていけないと思っているので。そのことを忘れずにやってほしい、ということだけです。
――ファイターズの次のステップというのはどんなものなんでしょうか。
鳥内 ステップはねえ…うーん。伝統、歴史の重みを感じてプレーできるというのはすごいことなのでね。これを感じて、表面上だけで勝ったらええんじゃなしに、そういうことを考えてやってほしいです。まだまだね、(部員が)200人くらいおったらね、よそ向いてる子がようさんおるんですよ。それをひとつにまとめてほしいと思います。
――監督、言い残したことはありませんか。
鳥内 全然ないです。
――まだまだいっぱいおありかと。もっと伝えたいこととかございませんか。
鳥内 また本が出るんちゃいます?(会場爆笑)以上です。
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