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2021-11-05

“柔道金メダリスト”ウィリエム・ルスカの練習法とは? 藤波辰爾が語る海外武者修行時代<7>【週刊プロレス】

アントニオ猪木を絞めるウィリエム・ルスカ

 藤波辰爾のプロレス人生において大きなターニングポイントになったWWWF世界ジュニアヘビー級王座奪取だが、それは同時にゴッチイズムの結晶でもあった。カール・ゴッチの教えは、今も現役を続ける藤波の大きな支柱になっている。

「カール・ゴッチの教えを受けた選手はいっぱいいるけど、どう受け取ったかは個々それぞれ違う。カール・ゴッチは闘っていくなかで最小限これだけはっていうことを教えてくれたんですよね。本来あの人がやってきたことは、僕らには到底マネできないことでね。まず自分が自分を信じて。そうなるために自分がしてきたことを教えて。

 自分の息子(LEONA)もプロレスラーとしてデビューしましたけど、周りに合わせるっていう気持ちは一切必要ないし、自分がまず何をするべきかっていうことを、先輩後輩の輪に入りながらも、自分の練習を常にやりなさいってことを言ってますね」

 帰国してからも、ゴッチの教えを身をもって感じることもあった。

「自分がやってきた練習をどうリング上で発揮するかっていうのは、もうコンディションしかないんですね。コンディションがよければ、自分の体がひとりでに動くんです。相手の大きさとか関係なく、相手をどうとでも操れるっていうか。

 いち時期、柔道界からウィリエム・ルスカがプロレスに転向して新日本に入ってきましたけど、僕らプロレスラーが柔道着を着て彼に挑んでもどうやっても勝てない。コンディションのよさと、柔道というものを本当によく知ってる。どうやったら相手の体が浮くかとか。

 確かに腕っぷしももちろん強いんだけどね。彼はオリンピックの前とか、柔道着を着て道場に、畳の上には立たなかったって。じゃあ、何してたかっていうと、柔道の練習をせずにほかのスポーツをやってたって。

 水泳とかサッカーとか。サッカーは走るでしょ。それで足の関節を鍛える。それとコンディション作り。そのために違うスポーツをして、大会の1、2週間前にやっと柔道着を着て、柔道の練習に入っていくって。彼の柔道に対する姿勢はすごかった。そう考えると、金メダル取って当たり前の選手。もう、僕らはみんなオモチャだったよ(苦笑)。

 どんなに踏ん張っても、引っこ抜かれるように体が浮いて。どんな世界でもそうだけど、その業界のトップになる選手はとんでもないですよ。今はどうかわかんないけど、僕らのころは道場にそれぞれの練習を取り入れてた。

 しかもそれぞれトップクラスの選手がいたしね。柔道は坂口(征二)さん、アマレスは長州(力)ってね。で、その競技のルールでぶつかり稽古するんだけど、やっぱり強い。まわしを締めて相撲を取っても、やっぱり相撲から来た選手相手だとまわしをつかんで投げようとしてもビクともしない。ウソみたいな力を出す。どうやっても、まったく動かない。やっぱり餅は餅屋ですね」

(つづく)

橋爪哲也

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