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2022-05-05

【陸上】日本選手権10000m男子展望:日本代表内定に最も近い駒大・田澤、東京オリンピック代表の相澤&伊藤を中心に展開か

優勝候補に挙げられる(左から)伊藤、田澤、相澤 写真/野中元

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田澤は3位以内で代表内定

5月7日、東京・国立競技場において第106回日本選手権10000m(兼オレゴン世界選手権代表選手選考会)が開催される。男子では世界選手権の参加標準記録27分28秒00を突破しているのは大会前の時点で田澤廉(駒澤大4年)ただひとり。日本陸連が定めた選考要項に則り、今大会で3位以内に入れば代表が内定する。

ここまでの田澤の歩みは順調だ。昨年12月の日体大長距離記録会において27分23秒44の日本歴代2位のタイムで走り参加標準記録を突破すると、1月の箱根駅伝ではエースの集う2区(23.1km)で日本人歴代2位となる1時間06分13秒で区間賞を獲得した。その後、休養を取り、3月からトラックシーズンに向け始動。今季初戦となった4月6日の金栗記念5000mでは13分22秒60とこれまでの自己ベストを7秒31も更新している。それでも「日本選手権に向けて確認の意味で走ったレースだったので、最後はそれほど追い込まなかった」とまだ余裕を残していたと田澤自身は振り返る。スタミナの向上により、ラストまで余裕度を残した走りが可能になっただけでなく、スピードも向上し、スパート勝負でも戦える手応えが出てきた。「優勝を狙いますが、世界に出たいという思いがあるので、展開を見ながら確実に3位以内に入る走りをします」と、レース状況を見極めながら、シニア初の日本代表を目指すつもりだ。

すでに標準記録を突破している優位性から、周囲の動きを見て順位だけを狙えばよく、精神的にゆとりを持って臨める。前々回は8位、前回は2位と日本選手権では着実に順位を上げており、10000mでは4戦連続で27分台を出すなど、高いレベルでの安定感を誇る。今回の優勝候補の筆頭に上げて問題ないだろう。

レースに戦略に注目が集まる
東京五輪代表の相澤&伊藤

他に優勝候補として挙げるべき存在は相澤晃(旭化成)と伊藤達彦(Honda)の東京五輪代表の2人か。そろって金栗記念10000mに出場し、伊藤が27分42秒48の日本人1位(全体2位)、相澤が27分45秒26の同2位(同5位)と参加標準記録には届かなかったものの、共に好走を見せた。

伊藤は金栗記念でも残り400mからスパートして相澤を振り切り、昨年5月の日本選手権でも残り2周を切ってから田澤を引き離して優勝している。中盤の苦しい場面でも粘れる強さを備えながら、ラスト勝負の強さも際立つ。

一方、日本記録保持者の相澤はハイペースで押し切るスピード持久力を備え、ロングスパートで勝負を決めるタイプ。一昨年12月の日本選手権では残り1600m付近から伊藤を引き離した。今回の日本選手権も参加標準記録突破を目指し、オープン参加の海外勢を中心にハイペースで進むことが予想されるが、優勝争いが最後の1周までもつれるようだと、ラストのキック力に勝る伊藤に分があるだろう。田澤、相澤がいかにしてそこまでにリードを奪い、勝ちパターンに持ち込むか。仕掛けどころも含め、彼らの戦略も見どころになる。

日本代表経験者も虎視眈々

上記3名以外にも実力者は多い。3月にアメリカで2022年の日本最高となる27分31秒27で走った清水歓太(SUBARU)、昨年12月の八王子ロングディスタンスで27分31秒13を出した太田智樹(トヨタ自動車)、金栗記念で伊藤、相澤に次ぐ27分48秒22で走った市田孝(旭化成)も注目すべき存在だ。5000mで13分16秒53の2021年日本リスト1位、2016年リオ五輪3000m障害代表の塩尻和也(富士通)、相澤の前の日本記録保持者(27分29秒69)で同じくリオ五輪10000m代表の村山紘太(GMOインターネットグループ)、など日の丸経験のある歴戦の実力者たちもスタートラインに立つ。

激闘と呼ぶにふさわしいレースが続いている近年の日本選手権男子10000m。今回も見ごたえのあるレースが期待できそうだ。
 
2022年の日本リスト1位の清水(写真/早浪章弘)
2022年の日本リスト1位の清水(写真/早浪章弘)

文/加藤康博

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