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2022-06-11

【陸上】世界選手権の参加標準突破者5人以外にも有力選手が続々参戦、日本選手権女子5000mの行方は?

左から田中、廣中、萩谷の東京五輪5000m出場組

オレゴン世界選手権代表選考を兼ねた第106回日本選手権(6月9日~12日/ヤンマースタジアム長居)。最終の12日(日)に行われる女子5000m決勝は、世界選手権の参加標準記録を突破している5人以外にも、日本トップクラスがそろう豪華な顔ぶれとなり、激戦となりそうだ。

実績で頭一つ抜けている廣中

廣中璃梨佳(JP日本郵政グループ)が昨年に続き、5月の10000mとの2冠を目指す。廣中、田中希実(豊田自動織機)、萩谷楓(エディオン)の東京五輪代表トリオに加え、木村友香(資生堂)と佐藤早也伽(積水化学)も世界選手権標準記録を破っている。さらには10000mで、廣中とともに世界選手権代表に内定している五島莉乃(資生堂)、東京五輪代表だった安藤友香(ワコール)も参戦する豪華な顔ぶれになった。

それでも廣中の実績が頭一つ抜けている。東京五輪では日本勢でただ1人決勝に進み、9位と惜しくも入賞は逃したが、14分52秒84の日本新をマークした。高橋昌彦監督によれば冬期は抑えめの練習を続け、4月には体調が良くない期間もあった。それでも5月7日の日本選手権10000mは、ラスト1000mを2分58秒4まで上げるスパートで快勝した。

高橋監督は今シーズンは無理をさせない方針で、5月の段階では追い込んだ練習はそれほどしていなかった。「6月の日本選手権5000mで少し上げて、7月の世界選手権に今年のピークを持っていく」(同監督)。その流れで5000mにも圧勝すれば、世界選手権への期待がさらに大きくなる。

萩谷も5月の10000mでは最後まで廣中に食い下がった。ラストで5秒引き離され「10000mで5秒ですが、その差はすごく大きい」と負けを潔く認めたが、初10000mだったことを考えれば大健闘といえた。

萩谷は1500mから距離を伸ばしてきた選手。19年日本選手権は1500mで卜部蘭(現・積水化学)、田中に次いで3位に入っていた。10000mでは廣中や五島の前に出られず「せこいレースをしてしまった」と課題に挙げたが、5000mでは萩谷が仕掛ける場面も見られるのではないか。

日本選手権10000mで廣中(左)に競り負けた萩谷
日本選手権10000mで廣中(左)と競る萩谷

東京五輪代表は3人とも、ラスト勝負に年々強くなっているが、一番強いのはやはり田中である。廣中、萩谷は中間走で田中を引き離す展開の方が勝機は大きくなる。田中が800m出場の70分後という点を考えても、ハイペースで消耗させる戦法をとるだろう。

木村もラストに強い選手で、田中に勝るとも劣らないスパート力を持つ。田中とすれば木村との3位争いに持ち込むより、廣中&萩谷が先行するなら、そこに食い下がった方が3位以内の確率は高くなる。廣中、萩谷はラストに強い2人を早めに振り切ることを考えるだろう。

標準記録を破っている5人以外では、五島の走りが注目される。自己記録が15分19秒58と標準記録突破者たちに比べ劣るが、代表を決めている精神的な余裕がある。日本選手権10000mで見せたように典型的なフロントランナー。14分台を狙って5000mでも先頭を走る可能性がある。

標準記録突破者たちは3位以内に入れば世界選手権代表に決まるが、性格的に廣中も萩谷も、優勝だけを狙って走るだろう。力と力が正面からぶつかり合うレースが期待できる。

日本選手権は3種目に出場し、1500mで優勝。800mの決勝から約50分後に5000mの決勝を迎える
日本選手権は3種目に出場し、1500mで優勝し世界選手権代表内定の田中。800mの決勝から約70分後に5000mの決勝を迎える

文/寺田辰朗 写真/毛受亮介、小山真司

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