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2024-01-27

【相撲編集部が選ぶ初場所14日目の一番】昇進懸けた大一番は琴ノ若。大関へ大きく前進

霧島を寄り切り、琴ノ若は場所後の大関昇進を濃厚に。敗れた霧島は、逆に綱取りから一気に遠のき、千秋楽での逆転にかけるしかなくなった

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琴ノ若(寄り切り)霧島

大関を土俵下に叩き落とし、納得の表情でうなずいた。
 
琴ノ若が2敗同士の対戦で霧島を倒し、大関昇進へ大きく前進、優勝戦線でも生き残った。

綱取りの大関霧島と、大関取りを狙う関脇琴ノ若の対戦。どちらにとっても、勝てば昇進の可能性が膨らみ、負ければ望みが消えるとまではいかずとも、遠ざかってしまうという戦いは、琴ノ若に軍配が挙がった。
 
琴ノ若にとっては、なんとしても白星を手にしたい一番だった。この日から豊昇龍が休場。千秋楽に顔が合うことが濃厚だった琴ノ若にとって、それは強敵が一人減って星が伸ばせる可能性が増える面もあるが、同時に大関との対戦に勝って実力を証明するチャンスが減ることも意味した。今場所の横綱・大関との対戦が2番に減り、きのう照ノ富士に敗れている琴ノ若としては、この日の霧島戦は、より必勝が求められる一番となったといっていい。いくら下位に対して負けない安定感を示しても、横綱・大関にまったく勝てないのでは、なかなか周囲は“大関の力がついたな”という印象を持たないからだ。
 
立ち合い。琴ノ若は硬くなったのか、2度、先につっかけ、霧島が“待った”。「相手の手が近いところにあって、出てくると思ったんで。しっかり当たっていこうと思った」と琴ノ若は言うが、その影響があったのか、3度目に立ったときには、やや琴ノ若が立ち遅れ、霧島のほうが突っ込んだかのように見えた。
 
しかし、結果的にはそれが琴ノ若に幸いするのだから、相撲とは本当に不思議なものだ。霧島はモロ手から突いて琴ノ若の上体を起こしにいったが、立ち合いのタイミングが影響したのかどうか、少しお互いの間に距離ができ、2人は腕を伸ばして押し合うような形になった。
 
この押し合いでのちょっとした膠着状態が、霧島の本来持つ、動きの速さ、姿勢の低さという強みを消し、琴ノ若にじっくり相手の攻めを受ける時間を与えた。このようにいったん動きが止まり、相手の攻めをじっくり受けられる展開になると、琴ノ若は強い(思い起こせば、琴ノ若が今場所負けた若元春戦、照ノ富士戦はどちらも、先に先にと相手に動かれた相撲だった)。押し合いから、機を見て右からイナし、霧島に横を向かせて右で廻しに手を掛けると、一気に土俵の外へ運んだ。

「(叩きは)とっさに体が動きました。慌てないでいこうと思っていたので、我慢できたと思います」と琴ノ若。これで12勝目。何より大関を堂々と寄り切ったことは印象の面で大きく、昇進は濃厚になってきたといえる。大関昇進の基準として巷間よく言われる「直近3場所33勝」にはまだ1つ足りないが、これは誰が言い出したかも分からない、“ここまで行けば間違いなし”という数字的な目安に過ぎず、個人的にはもはやこの1勝で大関の資格ありと見る(もちろん、あす翔猿に勝てば、数字の上でも文句なしになるわけだが)。
 
優勝争いでも、千秋楽で霧島と対戦する照ノ富士が不戦勝となったことにより、琴ノ若はこの日もし負ければ可能性が消滅するところだったが、生き残った。翔猿は過去の幕内対戦成績も互角(6勝6敗)で、琴ノ若にとって油断のならない相手ではあるが、霧島と戦わなければならない照ノ富士よりは、あすの本割の勝利確率に関しては、条件はよくなったといえるだろう。

「(大関取りは)それはあとからでいい。あしたも同じ気持ちでやるだけです」と琴ノ若。次は初優勝へと向かう。
 
一方、敗れた霧島。これで綱取りは大きく遠のいたが、まだ可能性がゼロになったわけではない。まずは千秋楽に照ノ富士に勝つこと。そこからすべてが始まる。その場合、①琴ノ若が本割で負けて優勝決定巴戦になり、霧島が逆転優勝。②同様に優勝決定巴戦になり、霧島は優勝同点の準優勝。③琴ノ若が本割に勝って、霧島は優勝次点の準優勝。の3通りの可能性があるが、横綱昇進に関して、果たしてどの場合にどういう判断が下されるかは見ものだ。個人的には、大局観として、今はやや甘めの条件でもいいので早く横綱を作るべき状況だと思うので、「②で上げても別にいいのでは」と考えるが、横綱の誕生にはファンのムードが必要になってくるので、現実には、おそらく現在の多数派である“12勝3敗ならやはり優勝しないと”という判断になる可能性が高い気がする。

文=藤本泰祐

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