close

2024-03-18

【相撲編集部が選ぶ春場所9日目の一番】大の里が若元春を倒して1敗キープ。全勝の尊富士との激突へ

若元春得意の左四つになりながらも、大の里は立ち合いからの勢いを止めずに圧倒。いよいよあす10日目は全勝の尊富士の前に立ちはだかる

全ての画像を見る
大の里(寄り切り)若元春

左四つは許しても、逆転は許さなかった。
 
大の里が若元春を正面から寄り切った。先場所ははね返された対三役戦の壁を、まず一つ突破だ。
 
この日の相手の関脇若元春とは、大の里が右、若元春が左のケンカ四つ。ただ大の里はこの日は立ち合いから差し手争いにいくという形はとらず、まずモロ手突きで起こしにいった。差し手争いに備えて、左を固めて立った若元春には、これはちょっと予想外だったかもしれない。すぐ突き返しにいったが、動きが遅れた分、腕が伸びずに上体が上がり、大の里の圧力を受ける形になった。
 
若元春は何とか左を差し込み、左四つで下手を取っていったんは土俵際をこらえたが、差し手の形は左四つでも、互いの廻し(腰)の高さがほぼ同じになり、胸が合う形になってしまっては、やはり体の大きな大の里の勢いが勝る。若元春得意の土俵際の逆転技も、相手の下に腰が入れられないのでは発揮できず、少し左の外掛けで抵抗しただけ。大の里がそのまま西土俵へ寄り切った。

「土俵際で差されて相手の形になったけど、止まったらねじ伏せられるので、多少がむしゃらでも休まずに、前に前に出られてよかった」と大の里。とにかく止まらずに前に出るという考えと、立ち合い相手の虚をつく形になったことが白星を呼んだと言えそうだ。
 
これで1敗を守り、9日目に勝ち越し。「(勝ち越しは)ホッとしています。先場所より、成長しているのかな」と、素直に喜んだ。
 
一方、その一つ前の取組では、優勝争いの単独トップに立つ尊富士が、初の三役戦で小結の阿炎を圧倒、全勝を守った。尊富士はこの日も鋭い立ち合いで、阿炎にモロ手突きの腕を伸ばす暇を与えず、中途半端な形から引かせることに成功、そこにつけ込み押し出した。

初めての幕内後半戦の土俵となった尊富士だが、「集中していました。いつも通り取れました」と、まったく影響は感じさせず。どこまでも肝の据わった新入幕だ。

そしていよいよ、あすは全勝の尊富士と1敗の大の里の、日の出の勢いの若手同士の大一番が組まれた。もし大の里が勝って2人が並ぶようなら、優勝争いは、やはりこの後の対上位戦で勝てる可能性の高い大の里のほうが少し有利か、という形となろう。さらには、後半調子を上げてきた琴ノ若、あるいはすんなりとカド番を脱出できれば貴景勝といった2敗の大関陣も一気に逆転の可能性が視野に入ってくる。一方、尊富士が勝って2差となった場合には、尊富士を、おそらくはその後、割を崩して当てられることになる三役陣がどこまで引きずり降ろせるか、という様相の優勝争いになる。

さて注目の対決はどうなるか。尊富士のほうは、今まで同様の形で当たっていくのはほぼ間違いないと思うが、果たして大の里が立ち合いどういくか。当たり負けしないことを優先し、右差しを狙って胸から当たるか、あるいは多少当たりの威力は減っても、この日のようにモロ手突きを採用して低い相手を起こしにいくか。どちらも立ち合い先手を取って相撲を展開するタイプだけに、どちらが当たり勝ち、そして差し勝って先手を取れるかが勝負を分けそうだ。

古くは昭和35(1960)年初場所12日目、全勝の新入幕大鵬に小結柏戸が下手出し投げでストップを掛けた一番が、結果的にのち柏鵬時代を築く二人の初対決として語り継がれることになったが(ちなみにこの時の大鵬が、15日制以降の新入幕力士の初日からの最多連勝記録)、それに負けないような、初対決での名勝負を期待したい。

文=藤本泰祐

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事



RELATED関連する記事