陸上競技からの引退、結婚、出産、7人制ラグビーへの挑戦を経て、陸上界に復帰した女子100mハードルの寺田明日香選手。東京オリンピックでは日本女子短距離で57年ぶりのファイナルを目指しています。7月31日の女子100mハードル予選まで、陸上競技マガジンに掲載された寺田明日香選手の連載を毎日公開!
※このコラムは『陸上競技マガジン』2020年8月号に掲載されたものです。
負けるのが怖くなり周りが気になるように 練習場所も少しずつ確保しやすい状況となり、本格的に部活動やチームの練習も始まりつつあると思いますが、以前と同じ練習スタイルは取れていない方が多いのではないでしょうか。
新しい生活様式とともに、新しい練習スタイルも求められ、困惑することも多いと思いますが、自分の目標や信念を見失わずに今できることを継続することこそが、成長へのカギになると考えて毎日を過ごしたいところです。
10代の頃の私が今の状況を経験していたらどう思うのかと、よく考えることがありますが、きっと自分がどうするかよりも、ほかの選手たちが何をして過ごしているかばかり考えて過ごしているのではないかなぁと思っています。
あ、今の私そうかも……と思った選手、いませんか?
練習環境や指導者に恵まれ、あまり人の背中を見て走る経験が少なかった10代後半の私は、“勝つのは当たり前”で、それ以外はなんの意味も持たないと思っていました。優勝してもタイムが悪いときの自分の走りや、一緒に走ったほかの選手のことに関しては、“興味がないフリ”をしていたのです(負けたレース、記録が悪かったレースの映像は全く見ませんでした)。
高1でインターハイを制してからは追われる立場として過ごすなかで、心の底ではジリジリと背中を追いかけてくる選手たちの圧を感じていて、「負けるのが怖い」と思っていました。実は練習中に他の選手の姿が頭によぎることは、少なくなかったです。
その感情を隠すべく、“近寄らないで”という空気を身にまとっていたような気がします。今考えると、本当に嫌なやつです……(笑)。
恵庭北高3年時のインターハイで100mH3連覇、100m・4×100mRの三冠を達成
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