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2021-09-24

【陸上コラム】メンタルヘルス新時代。東京五輪で寺田明日香と田中希実の源になった「適応力」と「防衛的悲観主義」

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田中希選手は東京五輪では5000mと1500mの2種目に出場し、1500mで日本人初の3分台(3分59秒19/準決勝)突入とともに、8位入賞を果たした(写真◎Getty Images)

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■東京五輪メンタルアドバイザー神崎保孝先生に聞く日本代表の舞台裏とアスリートメンタルヘルスへの提言

 57年ぶりの自国開催となった東京五輪は、日本勢が金メダル27個を含む史上最多58個のメダルを獲得し、盛況のうちに幕を閉じた。

 五輪競技の中でも花形のひとつとされる陸上競技では、メダルが期待された4×100mリレーがバトンミスにより失格となるなど苦戦も強いられたが、100mハードルの寺田明日香が日本人21年ぶりの準決勝進出を果たし、1500mの田中希実は予選と準決勝の走りで二度とも日本新記録を叩き出した上、日本人史上初の進出となった決勝では8位入賞の偉業を成し遂げるなど、歴史的快挙が続いた。

 自国開催とは言え、コロナ禍、1年延期、無観客というアスリートにとってこの上ない大逆風の中で臨んだ東京五輪本番。その上、果てしないプレッシャーが重くのしかかる大舞台で、なぜ目覚ましいパフォーマンスを発揮できたのか。今回は、選手をメンタルアドバイザーとして支えた臨床心理士・神崎保孝先生に、成功の舞台裏を聞いた。

■初めて語る東京五輪への関わりと、「後悔」の理由

――神崎先生の自己紹介をお願いいたします。

神崎 私は臨床心理士という心理学の専門家を本務としています。普段は、主に教育や医療の分野でカウンセリングや教員として学生指導を行っています。そのほか、教育委員会のスーパーバイザーや総合病院のアドバイザーなどを務めており、教員や医療従事者の先生方への助言・研修指導に携わっております。

――東京五輪への関わりについて教えてください。

神崎 今回の東京五輪では、僭越ながらご縁があって10名ほどの日本代表選手とその関係者の皆様に関わらせていただきました。その中には、新競技の空手形・金メダリストで閉会式旗手の喜友名諒選手、スポーツクライミング複合・銀メダリストの野中生萌選手がおられますが、日程や感染対策等の諸般の事情で、残念ながら事前のサポートに至らなかった選手も含まれます。

 例えば、スケートボードパークの岡本碧優選手もそのひとりです。世界ランク1位とはいえ、中学生で日本代表を務められる重圧は計り知れません。結果的に、最終試技で(金)メダルをかけた局面に挑まれることとなり、技術にも増して、まさにメンタルを問われる状況が巡ってきました。攻めのスケーティングと分かち合いのシーンは屈指のハイライトでしたが、返す返すも事前にメンタルのサポートができていればと、今更ながら悔やみきれません。

 一方、寺田明日香選手や田中希実選手には、心理分析などのアドバイザリーが行えましたので、制限の多かった準備段階の中では、一定の関わりを果たせたといえるかと思います。

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