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2020-04-15

【System of Arthur Lydiard vol.10】リディアード・トレ⑤ピーキングフレッシュ&シャープでスタート地点に

過ぎたるは、及ばざる

 言わずと知れたレジェンド、現在は日本陸連のマラソン強化戦略プロジェクトリーダーも務める瀬古利彦さんは、現役時代に恩師であった故・中村清監督から「マラソンのスタート地点には90%の出来で臨め」と言われていたそうです。

 90%とは、上り調子の90%の場合もあれば、すでにピークを越えて下り調子の90%があります。名伯楽が指していたのはもちろん前者で、レース前半をウォームアップとして、30㎞地点で100%になるというパターンがベストだ、という意味です。 そうなるためには、腹八分目。トレーニングを「やり過ぎるよりも、少し足りない目」にしておくことが大事です。

 リディアードの指導の下で、64年の東京五輪で男子の800mと1500mで金メダルを獲得したのは、ニュージーランドのピーター・スネルです。彼はその準備としての練習の全6カ月間の行程を通して、インターバル走は6回しか行いませんでした。

アーサー・リディアード
1917年ニュージーランド生まれ。2004年12月にアメリカでのランニングクリニック中に急逝。50年代中頃、「リディアード方式」と呼ばれる独自のトレーニング方法を確立した。その方法で指導した選手が、60年ローマ五輪と64年東京五輪で大活躍。心臓病のリハビリに走ることを導入した、ジョギングの生みの親でもある。

著者/橋爪伸也(はしづめ・のぶや)
三重県津市出身。1980年からアーサー・リディアードに師事。日立陸上部の初代コーチを経て、バルセロナ五輪銅メダリストのロレイン・モラーと「リディアード・ファウンデーション」を設立。2004年以降はリディアード法トレーニングの普及に努めている。現在は米国ミネソタ州在住。

ランニングマガジン・クリール 2020年5月号

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