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2021-09-30

【陸上】恩師・渡辺康幸氏が語る大迫傑のラストレースとこれまでの道のり

100%出しきったと言い切るレースで東京五輪6位に入った大迫

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日本陸上界に与えた影響

 新しい道を切り開き、十分な実績を残して第一線を退くことになった大迫だが、彼自身が日本の陸上界に与えた影響は、何だったのだろうか。

渡辺 大迫選手の歩みは、多くの若い選手に世界で戦う意識を強く植え付けたことは間違いありません。現在の学生界には、入学した当時から駅伝と並行しつつ、将来的な個人の目標をイメージしながら競技に取り組む選手が増えてきている印象です。それは指導者についても同じで、世界に羽ばたいていく選手を囲むのではなく、伸びていく環境をつくっていかないと、生きていけなくなっていく。それは世界基準で考えたとき、非常に良い傾向だと考えています。 


独自の道を切り開いたその歩みは、日本の若い世代にも大きな影響を与えた

 日本のシステムは大学駅伝から実業団に行って、駅伝もやりながらマラソンへというルートで日本代表になってきた選手が多いです。ただ、そのルートからはみ出るとたたかれる、飯が食えないと決めつけられていた部分があったことも事実です。そういう流れの中で大迫選手と川内優輝選手(AD損保)は独自のスタイルを貫くことで新しい道を切り開いた。従来のルート以外にも強くなる方法があってもいいのではないか。そういう考え方をもたらしてくれたことも功績の一つです。 

 彼自身が主導している若手のトップ選手を育成する独自のプロジェクトと、日本陸連の取り組みが互いに相乗効果を与え合える道を模索できれば、今後のさらなる発展につながっていくのではないでしょうか。 

 大迫選手が持つノウハウは、日本の陸上界にとっても大きな財産です。23歳から28歳くらいの一番成長できる時期に自ら厳しい環境に身を置き、ここまでやってきました。一部の日本の関係者、メディアからの批判的な見方を受けながらも、結果を出し続けてきました。誰もが認めざるを得ない実績を持って、セカンドキャリアに入っていくことは、彼自身のブランドの確立としても大きかったと思います。 

 もっとも彼の場合、どこにいてもおそらく強くなったと思いますけどね。

構成/牧野 豊 写真/椛本結城、BBM、JMPA

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