
5㎞のレースを目標とした場合、5㎞のタイム・トライアルを4~6回行う間に、毎回10~15秒タイムを縮めていくことを目標とします。そして毎回の走りを細かく分析して、スピードが劣る場合は、1500~2000mのトライアルやスプリント練習を行う。後半のタイムが頭打ちになるようであれば、10~20㎞のトライアルで持続するパワーを培います。
どれだけトライアルを走れるか。それはスタミナの度合いによって異なりますが、このようなトレーニングサイクルを数回行うことで、自分は何回くらいトライアルをすればピークの走りができるようになるのか、個人の経験則で全体像が見えてくることでしょう。
人によって、トライアルを多めに行わなければ「乗って」こない場合もあるでしょう。また逆に、スピードに磨きがかかるのが早すぎる場合、少し長めのジョグを行ったり、スプリント練習を控えたりして「フタをする」といいでしょう。
トライアルのタイムがどんどん速くなっていくのに興奮して、自己の抑制を忘れるとピークが早く訪れて、本番の数週間前のトライアルがベストの走りになってしまう、ということも稀ではありませんので要注意。このあたりのサジ加減は、自分の適応能力を分析しながら経験を積むことで、自分なりのパターンがわかってきます。
それこそがコーディネーションの「バランス・アクト」であり、また私自身もコーチとして、このあたりが一番エキサイティングな部分でもあります。
アーサー・リディアード
1917年ニュージーランド生まれ。2004年12月にアメリカでのランニングクリニック中に急逝。50年代中頃、「リディアード方式」と呼ばれる独自のトレーニング方法を確立した。その方法で指導した選手が、60年ローマ五輪と64年東京五輪で大活躍。心臓病のリハビリに走ることを導入した、ジョギングの生みの親でもある。
著者/橋爪伸也(はしづめ・のぶや)
三重県津市出身。1980年からアーサー・リディアードに師事。日立陸上部の初代コーチを経て、バルセロナ五輪銅メダリストのロレイン・モラーと「リディアード・ファウンデーション」を設立。2004年以降はリディアード法トレーニングの普及に努めている。現在は米国ミネソタ州在住。
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